クラシックレビュー
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early music / orchestral / concerto / chamber / instrumental
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.
 

有田正広

J.S. バッハ:フルートソナタ全集
有田正広

有田は2000年にこれらの曲を再録音しているが、これは1989年の旧録音。デンオンのアリアーレ・シリーズ第一回リリースだったものだ。アリアーレにとって記念すべきアルバムであるだけでなく、有田にとってもかれの名を広く世界に知らしめるきっかけとなった重要なアルバムだった。現在でも古楽器(フラウト・トラヴェルソ)によるバッハの最高峰と言える名盤である。
新録音は最近の流れに従ってバッハの真作のみを収録しているため曲数が少ない。マスターは偽作でも曲が優れていれば聴きたいと思う方なので、昔ながらの8曲入り全集が好みである。演奏も実際のところ新録音と較べて大差がない。
新録音発表の翌年だったかに有田のナマを聴いた。ふくよかでよくこなれた、スケール感のある名演奏だった。CDとあまり変わらないな、と感じたのを覚えている。旧録音はさすがにスケール感では劣るものの、表現がフレッシュでストレートなのがいい。研究と研鑽の成果を活かしたと謳う新録音に失礼かも知れないが、好みである。できれば両方持っていたい。

<CD 1>
1. フルートと通奏低音のためのソナタ ハ長調 BWV1033
2. フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034
3. フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1032
4. フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031
<CD 2>
1. フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030
2. 無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013
3. フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1020
4. フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調 BWV1035

有田正広(フラウト・トラヴェルソ)
有田千代子(チェンバロ)
鈴木秀美(バロック・チェロ)

・Released in 1989
Denon Ariale (2CDs)

バッハ:フルートソナタ全集
新録音は
バッハ:フルートソナタ全集

モダンフルートなら
ニコレ:バッハ

レオニード・コーガン J.S. バッハ:ヴァイオリンソナタ全集
レオニード・コーガン/カール・リヒター

オブリガートチェンバロをともなうヴァイオリンソナタ全6曲。それまでの通奏低音つきソナタとちがい、チェンバロパートがきちっと書き込まれているのが特徴だ。チェンバロの右手が明確に独立した声部を担当するようになり、音楽構造上の重要度が増している。これら6曲はチェンバロが単なる伴奏の域を脱したという点で先進的なソナタだったのである。
レオニード・コーガンとカール・リヒターによる演奏は繊細で、祈りと感動にうち震えるかのようだ。情感ゆたかで、アダージョ楽章では美しさの中から深い哀しみがにじみ出す。心を揺さぶられる演奏だ。言うなれば神の前のちっぽけな人間。謙虚な思いで祈りを捧げるような、そんな姿勢が伝わってくる。

<CD 1>
1. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第1番 ロ短調 BWV1014
2. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第2番 イ長調 BWV1015
3. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第3番 ホ長調 BWV1016
<CD 2>
4. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第4番 ハ短調 BWV1017
5. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第5番 ヘ短調 BWV1018
6. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第6番 ト長調 BWV1019

 

Leonid Kogan, violon
Karl Richter, cembalo

・Recorded in 1972
(2CDs)

コーガン/リヒター

コーガンの協奏曲録音
Kogan Plays Bach, Vivaldi, Mozart
Kogan Plays Beethoven & Mozart
Kogan Plays Brahms & Mendelssohn

バルヒェット J.S. バッハ:ヴァイオリンソナタ全集
ラインホルト・バルヒェット

通奏低音つきソナタ4曲とオブリガートチェンバロをともなうソナタ6曲。LP3枚分がCD2枚に収まっている。価格は安いが演奏は極上だ。バルヒェットというヴァイオリニストは室内楽の名手として知られる人物。真摯でおだやかな人柄が感じられるような、滋味あふれる肩の凝らないバッハを聴かせてくれる。いかにもバッハらしい内省的で思索的な音楽でありながら、どこかラテン的な明るさを感じさせるのが特徴。チェンバロがラクロワだからだろうか。
バッハの楽譜を見ると単調なフレーズの繰り返しと思える部分が多いが、バルヒェットはそんな部分でも楽興がとだえることがない。当たり前? いやいや、巨匠・大家クラスの演奏でも繰り返し部分が機械的にきこえることがよくあるのだ。それに対し、バルヒェットで盤はすべての音が必然性をもって響く。心地よい緊張感が最初から最後までつづき、聴き終えて深い充足感がのこる。抑えた演技の俳優が深い感動を与えてくれるように…。
派手なタイプの演奏が好きな人には向かない。スークとかズスケとか、あの辺のヴァイオリニストがお好きな人にはお奨めだ。とくにBWV1014から1019までの6曲は曲も素晴らしいし、巨匠・大家の録音に負けない名演といえるだろう。エラートの録音のよさも申し添えておきたい。録音の古さがまったく気にならない。

<CD 1>
1. ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ハ短調 BWV1024
2. ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV1021
3. ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ヘ長調 BWV1022
4. ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ長調 BWV1023
5. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1014
<CD 2>
6. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1015
7. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ホ長調 BWV1016
8. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ハ短調 BWV1017
9. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ヘ短調 BWV1018
10. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1019

 

ラインホルト・バルヒェット, ヴァイオリン
ロベール・ヴェイロン=ラクロワ, チェンバロ
ヤコバ・ムッケル, チェロ

・Recorded in 1961(?)
Erato (2CDs)

バッハ:ヴァイオリンソナタ全集

バルヒェットの室内楽
モーツァルト:五重奏曲集

アンドリュー・マンゼ:バッハ J. S. Bach: Violin Sonatas
Andrew Manze

初心者厳禁。すでにこれらの作品をよくご存知の方にお奨め。いやはや実際、最初のロ短調ソナタが始まって驚いた。ヤープ・テル・リンデンがガンバをひいているのだ。この曲はヴァイオリンとオブリガートチェンバロだけで演奏されるはずではないか。狐につままれた思いで解説を見ると、BWV1014から1019までの最も古い版にはヴィオラ・ダ・ガンバを加えてもよいと書いてあるのだという。バッハの次男エマニュエルがこの曲集について「トリオ」と書き残しているのも傍証となるのだと。
というわけで、この聴き慣れないスタイルでの録音となった。マンゼらしいと言うべきか。ガンバの入っているのはロ短調のほかイ長調のソナタ。ほかに珍しいのはト長調(BWV1019)の異稿が収められていること。バッハは最終的に真ん中にチェンバロソロをもってきて5楽章構成としたのだが、それ以前の姿、つまり第一楽章をチェンバロソロとした4楽章の形で演奏されているのだ。文献ではバッハの推敲のプロセスを読むことができるけれども、こうやって実際に聴けるのは珍しい。
もっと珍しいものがある。あの『トッカータとフーガニ短調』のヴァイオリンソロ版。ヤープ・シュレーダーによる版だという。こう書いてくると珍盤奇盤の類かと思われてしまいそうだ。しかしそれは誤解ってもの。
マンゼは決してへんてこなことをやっているわけではない。珍しいものを紹介しているだけである。演奏姿勢は真面目だし(実際のキャラはともかく)、技術的にも抜群のレベル。古楽器演奏者によく言われる学究的な硬さがなく、のびのび音楽を楽しんでいる。衿を正して正座して聴くようなバッハではないが、当時の人々はバッハを神々しいものとは捉えていなかっただろう。伝道者みたいな奏者のバッハも悪かないけれど、マンゼのしなやかなバッハは親しみやすくて魅力的だ。

附記)通奏低音付きソナタのうち、偽作と考えられているヘ長調BWV1022は収録されていない。

 

Andrew Manze, violin
Richard Egarr, cembalo
Jaap ter Linden, gamba or cello

・Recorded in 1999
Harmonia Mundi France
HMU 907250. 51 (2CDs)

Bach: Violin Sonatas

マンゼのおすすめ盤
Corelli: Violin Sonatas, Op. 5
Tartini: The Devil's Sonata
Biber: Violin Sonatas
Rebel: Violin Sonatas
Handel: Complete Violin Sonatas

国内盤では
コレッリ:ヴァイオリンソナタ
ビーバー:ロザリオのソナタ
悪魔のトリル
ヴィヴァルディ:皇帝のための協奏曲集

 
<CD 1>
1. Sonata in B minor, BWV1014
2. Sonata in A Major, BWV1015
3. Sonata in E Major, BWV1016
4. Sonata in C minor, BWV1017
5. Sonata in F minor, BWV1018
  <CD 2>
6. Toccata & Fugue in D minor, BWV565
7. Sonata in G Major, BWV1019
8. Sonata in G Major, BWV1019a
9. Sonata in G Major, BWV1021
10. Sonata in E minor, BWV1023
11. Sonata in C minor, BWV1024
ゴルトベルク変奏曲 J.S. バッハ:ゴルトベルク変奏曲
ヘルムート・ヴァルヒャ

70分を超える長時間演奏。LPのときは1枚半(つまり3面)を要していたように記憶する。楽譜の指示どおりにリピートを行っているためで、裏返したり交換したりしなくてすむCDはありがたい。録音は40年以上昔のもの。まだ古楽器による演奏が一般化しておらず、モダンチェンバロ(アンマー・チェンバロ)を使用している。現代ピアノの製造法が反映された楽器で、力強く大きい音が出る。倍音の響きかたも違う。古楽器の音色に慣れた耳には違和感があるかもしれない。
しかし演奏については数多の録音の中で最も説得力のあるものではないだろうか。テンポの設定にしてもこれほど妥当な感じのする演奏はほかにない。リュート・ストップによる音色の変化を織りまぜ、ヴァルヒャはゆったりした歩みで各変奏をていねいに描いていく。ある貴族の眠れぬ夜の楽しみとして書かれたものであり、こういうせかせかしない演奏こそがふさわしいだろう。
バッハは実によく構成を考えており、3の倍数の曲がカノンになっていたり、真ん中に当たる第16変奏が「序曲」として後半の開始を告げる役目をしていたり、さまざまな工夫が凝らされている。ヴァルヒャの明快な演奏を聴いていると、まるで楽譜を見ているかのようにそれらの「聴きどころ」がよく分かる。各声部の弾き分けも完璧だから、バロック多声音楽の面白さを初心者でも充分に味わうことができるだろう。

 

ヘルムート・ヴァルヒャ, チェンバロ

バッハ:ゴルトベルク変奏曲

ほかには
インヴェンションとシンフォニア

古楽器による名盤
レオンハルト:ゴルトベルク変奏曲

 
1. ゴルトベルク変奏曲 BWV988 (アリアと30の変奏曲)
パッヘルベル Pachelbel: Chamber Music
London Baroque

パッヘルベル(1653-1706)が1695年にニュルンベルクで出版したトリオソナタ集『音楽の喜び』全曲をおさめたもの。オマケとして5声と4声の『組曲』、おなじみ『カノンとジーグ』が収録されている。演奏はロンドンバロック。もちろんヴァイオリンはいつものイングリッド・ザイフェルトなわけだが、『組曲』だけはマンゼが担当している。
『音楽の喜び』は6曲あって実質的にはパルティータ。教会ソナタではなく室内ソナタと考えていい。アルマンド、クーラント、ガヴォットなどバロック定番の舞曲を中心に構成されている。面白いのはヴァイオリンがスコルダトゥーラで演奏されること。ビバーの代表作『ロザリオのソナタ』と同じで、調弦を通常とは変えて演奏する手法。残念ながら解説書にはどういう調弦なのか書かれていない。
有名な『カノンとジーグ』はもちろんオリジナル版で、3挺のヴァイオリンと通奏低音で奏される。わたしはかつてMAK(ムジカ・アンティクァ・ケルン)の快速演奏に驚いた覚えがあるが、ロンドンバロックも速めのテンポですいすい進んでいく。大編成でゆったりやった演奏しか知らない人にぜひ聴いていただきたい。

 

London Baroque

・Recorded in 1994
Harmonia Mundi France
HMC 901539

♪ Canon & Gigue

Pachelbel: Chamber Music

Pachelbel's Greatest Hit
カノン100%
Classic Rock Violin

 
1. Musicalische Ergotzung (1695)
2. Partie a 5 in G-dur
3. Partie a 4 in G-dur
  4. Partie a 4 in fis-moll
5. Canon & Gigue
パッヘルベル Pachelbel: Music for Organ
Werner Jacob

パッヘルベルはバッハ以前、ドイツ、オーストリアの各都市で作曲家、オルガニストとして活動していた。かれの作風はイタリアの影響が指摘されるが、大先輩フローベルガーだってイタリアの影響どっぷりからスタートしているわけで、特筆するほどのことではないと思う。ただブクステフーデやバッハあたりと較べると構築性より旋律性のほうがきわだって聴こえ、あまりドイツっぽさを感じないかも知れない。
とにかく美しい曲が多い。筆頭は『チャッコーナ ヘ短調』だろうか。哀しいほどの美しさだ。コラール前奏曲『暁の星の美しきかな』、コラール変奏曲『わがいのちなるキリスト』あたりもたいへん美しい。既存のコラールを素材に多声的展開を聴かせるもので、素材のもつ祈りの情感を活かしながら巧みな対位法を披露する。

パッヘルベルのオルガン曲は米ケンタウロス(右記)などいくつかのレーベルが体系的に録音している。興味のある方は検索してみていただきたい。

 

Werner Jacob, organ

・Recorded in 1988
Virgin Classics VC 7 59197 2

Pachelbel: Music for Organ

Organ Masters Before Bach
The Complete Organ Works, Vol.1
The Complete Organ Works, Vol.2
The Complete Organ Works, Vol.3
......

 
1. Praeludium, Fuga und Ciacona in d-Moll
2. Num komm, der Heiden Heiland
3. Meine Seele erhebet den Herren
4. Magnificat-Fuga
5. Gelobet seist de, Jesu Christ
6. Vom Himmel hoch, da komm ich her I
7. Vom Himmel hoch, da komm ich her II
  8. Toccata in F
9. Wie schoen leuchter der Morgenstern
10. Ciacona in f-Moll
11. Partita: Christus, der ist mein Leben
12. Praeludium und Fuga in c-Moll
13. Aria Sebaldina
14. Toccata und Ricercare in c-Moll
 
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