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絵本・児童書

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あめふらし

editor's choice

絵本グリムの森《あめふらし》:出久根 育

出久根育さんの描いた原画は「第19回ブラティスラヴァ世界絵本原画展」でグランプリを受賞している。日本人としては3人目の受賞だそうだ。グリム童話を素材に、あざやかな色彩を使いながら大胆な画面構成とデフォルメによって幻想的な世界を創り出している。ちょっと日本人離れした感覚だ。
話の筋は単純。結婚する意志がなく、求婚者の姿を見つけたら捕らえて串刺しにしてしまうという王女。ある若者が挑戦を思い立つのだが、はたしてうまく姿をかくすことができるのか。若者は動物たちに知恵を借りていろいろと試みるのだが…。
串刺しだなんて残酷な、とお思いの向きもあるだろう。しかしメルヘンとは本来そういうもの。日本人が使う「メルヘン」という言葉はヨーロッパのメルヘンとはだいぶイメージが違う。文字どおりの夢物語だ。しかし実際のメルヘンは残酷で暴力的で理不尽。メルヘンが誕生した頃の世の中が残酷で暴力的で理不尽だったことを反映しているのだろう。
難しい話はさておき、この本には残酷シーンは描かれていない。何度でも手にとって楽しめる美しい絵本だ。大判なのもいい。

 

あめふらし(絵本グリムの森)

ほかには
ルチアさん
ペンキや
ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心
おかしな兄弟たち
郵便配達マルコの長い旅

●参考
首をはねろ!

幻想世界へ
アリストピア

クリスマスの12日

The 12 Days of Christmas: Robert Sabuda

今やポップアップ絵本の巨匠となったロバート・サブダ。これはかれの「技」のすごさが充分に発揮された傑作といえるだろう。素材はあの楽しい歌『クリスマスの12日』だ。見開きごとに歌詞が掲載されていて、歌詞に合わせた大胆な仕掛けが次々と飛び出してくる。そのスケールの大きさと完成度の高さはさすがである。頁の端っこにオマケの仕掛けがあるのもいつもどおり。
面白いのは仕掛け部分がほとんど「白」だというところ。色がないため想像力がかきたてられる。サブダの工夫のあれこれもよく分かる。…いや、繊細な「10人の笛吹き」、精巧複雑でアイディアに満ちた「11人の踊る貴婦人」など、何度見てもわからない。いったいどういう頭をしているのか。子ども向けってことになってるけれど、大人が見た方が驚くし、感動するんじゃないかな。

 

The 12 Days of Christmas
邦訳もある
クリスマスの12日しかけえほん

サブダのクリスマスは
The Night Before Christmas
Christmas Alphabet
同上邦訳本は
ナイト・ビフォー・クリスマス
クリスマス・アルファベット

クレーの絵本

クレーの絵本:谷川俊太郎

クレーはヴァイオリンがうまくて、バウハウスの学生たちにちょくちょく弾いて聴かせていた。その時ピアノで伴奏をつけたのが親友カンディンスキー。二人の教授の演奏ははたしてどんなものだったのか。今では知る由もないが、かれらの作風を考えると納得のいくエピソードだ。
特にクレーの作品は音楽的だという人が多く、かれの作品にインスパイアされた音楽作品はジャンルを問わずたくさんある。詩人の創作欲もかきたてるようで、わが谷川俊太郎もこんな素敵な一冊を届けてくれた。
収録作品は40点。そのうちいくつかに谷川の詩が添えられている。たとえば表紙の〈黄金の魚〉にはこんなぐあいに…
「どんなよろこびのふかいうみにも/ひとつぶのなみだが/とけていないということはない」

  クレーの絵本

これもいかが
クレーの贈りもの
クレーの詩
クレーの天使

クレーの天使:谷川俊太郎

そこのせかせかしてるあなた。ちょっと深呼吸して、紅茶でも淹れて、この本を開いてみなさい。クレーの描いたとぼけた天使たちの言葉に耳を傾けてみなさい。
上記『クレーの絵本』につづく谷川俊太郎の書き下ろし詩画集。天使の絵45点と18編の詩で構成されている。アイドル〈忘れっぽい天使〉を筆頭に〈星の天使〉〈醜い天使〉〈用心深い天使〉〈哀れな天使〉〈おませな天使〉など、天使、天使の大行進。見ているだけでも脱力していくほのぼのキャラクターたち。
そこに添えられているのが谷川のしんとした詩の数々。しかし正直なところ、面白くない。優れた作品もあるのだが、クレーの絵の説明になってしまっているものが多い。詩としての独立性に乏しいのだ。読み手がクレー作品から何を感じとるかは十人十色。説明されてしまったのでは谷川の感性とのギャップがあらわになるだけ。もっと自由に飛翔できる人ではなかったのか。詩だけ較べたら前作の方がよかった。
まあしかし、クレーの天使コレクションとしては見ていて楽しい。長く見過ぎると何故かこわさが感じられるけれども、その理由についてはあとで考えてみよう。

  クレーの天使
谷川俊太郎の朗読CD
クレーの天使〈朗読〉
ブルーノ・ムナーリ

The Circus in the Mist: Bruno Munari
(きりのなかのサーカス:ブルーノ・ムナーリ)

ムナーリの代表的傑作絵本。マスターが美術を学んでいた頃、銀座の洋書店ではじめて見つけたときどれだけショックを受けたことか。半端な驚きじゃなかったんですよ、実際。

霧の立ちこめる道を通ってサーカスを見に行くという単純なストーリー。最初の頁は霧の中に一羽の鳥が飛んでいるだけ。しかし霧を透かしてその先に信号が見え、さらにその先には乗り合いバスがぼんやり見えている。そんなふうに描いたから、ではなくて、トレーシングペーパーに印刷してあるから。頁をめくっていくとさっきぼんやりしていたものが次第にはっきり見えてきて、さらに先の風景がうっすら見えてくる。トレペならではの表現方法だ。
サーカスの頁は一枚ごとに色の違う紙が使われ、お得意の穴あき絵本になっている。穴から次の頁の一部が見えるという、あの技法。印刷はスミ一色なのに紙の色が違うから実にカラフル。ひょうきんな絵も楽しい。
見はじめたら頁をめくるのが楽しくてしょうがない。年齢を問わずだれでも楽しめると思うが、とくにデザイナーや出版関係者にとっては刺激的で興味深い絵本だろう。プロが見ると工夫の面白さ、難しさがよくわかるから。

 

きりのなかのサーカス
洋書は
The Circus in the Mist

ムナーリの動物園
Bruno Munari's Zoo
こどもと楽しむ
木をかこう

この人のしかけ絵本も楽しい
まどからおくりもの
きいろいのは ちょうちょ
とうさんまいご

エドワード・ゴーリー

題のない本:エドワード・ゴーリー

わたしの立ち寄るある書店では、ゴーリーの絵本を英米文学のコーナーに置いてある。絵本コーナーでも児童文学コーナーでもなくて。たしかにゴーリーの不条理ワールドは大人向けだろう。これを楽しむ子どもがいたらこわいかも知れない。
この作品は絵の視点がまったく変わらないのが特徴。表紙にある木の植えられた庭と建物の窓という情景が、固定カメラで撮しているようにまったく変わらないのだ。そこに不可解な姿の生物がコマ落としのように現れては消えていく。それだけ。
文字はほとんどない。各頁の絵の下にほんの一つか二つの単語が書かれているだけで、それがまた意味不明。翻訳ものなのでその単語をそのまんまカタカナにしてあるが、これって必要?原語の意味ありげな綴りを読んだほうが面白い。学術用語ふうの接頭語がついたさまざまな造語たち。これらが絵のタイトルを兼ねている。
ここまで表現を切りつめた作品はゴーリーとしても例外的。文字を頼りにしたい人は面食らうかも。わたしはゴーリーのエッセンスを感じて高く評価するのだが…。

エドワード・ゴーリーはベケットの挿画を描いていた人物。だからといって過大評価するつもりはないが、受け手しだいでどのようにもとらえられる作品ばかり。右に揚げた作品たちも奇妙な状況設定から現実を照射するという点で共通する。不思議な話だからファンタジーなんだと簡単に考えて面白がる人もいるだろうが(それでもいいけど)、ゴーリーはじつは、現実を描いているのだ。ベケットのように。

 

題のない本

いろいろあるけど売れ筋は
うろんな客
おぞましい二人
敬虔な幼子
不幸な子供
優雅に叱責する自転車

羊のセルマ

羊のセルマ:ユッタ・バウアー

今よりもっと時間があったら、どうします?もっとお金があったら、どうします?時間とお金。だれもが欲しがりそうなものを示されても、羊のセルマおばさんは生活を変えようとは考えない。他人から見れば単調かも知れないごく普通の毎日の繰り返し。でもかの女はそれ以外のものを望まない。
冒頭に書かれているのは“Was ist Gluck?”という問いかけ。「幸せとは何か。」セルマの生活を見ていると無欲で平和な毎日を送ることこそ幸せなのだと言っているように思える。変化を求めてどうするつもり?セルマはそう問いかけてくる。そこの胸に手を当てて考えてるヒト、反省することでもあるんじゃないの?
ところでこの和訳、英語版からの重訳じゃないだろうか。原文の“Frau Meier”が「ミラー夫人」になっている。セルマの変わらぬ毎日を書いた文章もただの繰り返しではなくて微妙に変化していく。この訳でいいのかな。最後の場面はセルマの死を暗示する表現になっているが、訳文ではそれが解りにくい。

 

羊のセルマ

ユッタ・バウアーは他にも
おこりんぼママ
いつもだれかが…
色の女王

アクセル・ハッケ

ちいさなちいさな王様:アクセル・ハッケ/ミヒャエル・ゾーヴァ

ミュンヘンのアパートに住むサラリーマンのぼくは、人さし指ほどのちいさい王様と暮らしている。このいばりかえった王様は、生まれたときは大きかった。歳をとるにしたがって小さくなってきたのだ。大きかった頃は何でも知っていたし、何でもできた。今ではいろいろ忘れてしまい、できることも少なくなった。いや、王様が自分でそう言っているんだ。「なに、お前たちのところはその反対だって?」
王様といっしょにいると、ぼくには不思議なものが見える。たとえば街角の青いドラゴン。ぼくが会社に行きたくないと思って足が重くなるとき、じつはあいつがぼくを引き止めているんだ。ずっと気がつかなかったけれど。
きみのところにも、きみのちいさい王様がいるかも知れないよ。いや、ほんとはだれのところにもいるんだ。忘れちゃったか、気がつかないか。王様がいなくてさびしい思いをしてる人はいっぱいいるんだろうな。きみの王様は小さくなりすぎて消えてしまったのかい?
え、王様って何のことかって?それは…。

 

ちいさなちいさな王様

アクセル・ハッケは他にも
プラリネク―あるクリスマスの物語
キリンと暮らす、クジラと眠る
クマの名前は日曜日

 
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