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おしゃべりなたまごやき

おしゃべりなたまごやき:寺村輝夫/長 新太

TVで訃報(2005年6月25日死去、77歳)を知り、久しぶりに取り出してみた。名作の多い長新太絵本のなかでも、とくに息子のお気に入りだった一冊。寺村輝夫の楽しいストーリーをすぐ思い出した。

王さまの秘密をしゃべってしまうたまごやきというのも愉快な設定だが、王さまがちょっとずるいというのが、小さい子どもたちにウケた最大の理由かも知れない。王さまのいたずらは、ばれそうでばれない。ドキドキわくわくの展開。さいごにたまごやきのせいでばれてしまうものの、それは王さまとコック(失敗したもの同士)ふたりだけの秘密としてしまっておかれるのだ。子どもたちはここで妙にほっとしたりするのでかわいい。
長 新太ののほほんとしたタッチはとぼけまくる王さまにぴったり。ロングショットとクローズアップの使い分けは、子どもたちにストーリーと王さまの心理を想像させるための工夫と思われる。高いところからあわてる王さまを見たり、すぐそばでウソをつく王さまを見たり…という具合。
赤を効果的に使った色彩配置、大胆な構図も見事。とくに赤を際だたせるために長がどんな配色を行ったか、美術を勉強中の人は研究の余地あり。

 

おしゃべりなたまごやき

長 新太名作選
ぼくのくれよん
いたずらラッコのロッコ
キャベツくん (爆笑シリーズ)
つきよのキャベツくん
みみずのオッサン

寺村輝夫は
あいうえおうさま
ぼくは王さま
たんじょう日のプレゼント
まいごになったぞう

ふしぎなたけのこ

ふしぎなたけのこ: 松野正子/瀬川康男

たけのこはよく伸びる。孟宗竹の場合だと、一晩に150cm伸びることもあるという。しかしたろが夕飯のおかずに採りにいったたけのこは、そんなもんじゃなかった。しがみつくたろを載せたまま、はるかに天高く伸びていく。村人たちはたろを助けようとたけのこを切り倒す。たけのこが倒れるのにまるまる一晩かかった!
次の日、たけのこを伝ってたろを探しに行った村人たちは海に到達する。これがうわさに聞いた海というものか。村人たちは海の幸を手に入れ、それからはみんな長生きで幸せにくらした。

スケールの大きい単純なストーリーを一気に読ませる松野のペンといにしえの日本を美しいマチエールで描き出す瀬川の筆の幸福な合体。日本画の技法を活かした瀬川のタッチが独特の世界を創りあげ、大人が見ても満足度の高い仕上がりだ。
1967年に「世界絵本原画展大賞」を受賞した瀬川の代表作の一つ。初出から40年以上経っているのだが、いつまでも新鮮さを失わない素晴らしい絵本だ。お奨め。

 

ふしぎなたけのこ

瀬川康男作品は
やまんばのにしき
つる姫
したきりすずめ
北極のムーシカミーシカ
ことばあそびうた

松野正子は
こぎつねコンとこだぬきポン

やこうれっしゃ

やこうれっしゃ:西村繁男

文章のない物語。上野駅を夜9時半過ぎに発車した夜行列車は、冬の夜を金沢に向けてひた走る。さっき上野のコンコースで見かけた親子連れはB寝台に乗り込んだ。列車が動き出すと、初老の紳士はA寝台で煙草をふかし始めた。
横位置横開きの細長い画面を活かして、西村は列車内の人々を克明に描写する。夜行列車の乗客図鑑。なんにも説明がないから、見ている側がその人々に物語を当てはめていく。トランプに興じる若者たち。地図を見ながら語り合う男たちの上の網棚には大きいリュックがある。旅行かばんを枕に眠る普通車の乗客たち。グリーン車でいつまでも窓の外を見ている男は、何を考えているのだろう。

てっちゃん(鉄道マニア)が見るとさらに多くのことが読みとれる。深夜0時半に停車しているのは水上駅。トンネルは清水トンネルだろう。トンネルを抜けると雪国だ。保線員たちが列車の通過を見守っている。列車外の描写も芸が細かい。描きつくす男西村繁男ならではの面白さ。

右に示した作品のどれもが西村の徹底した描写を味わえるもの。かれの描写が心を捉えるのは、モノだけでなくコトまで丹念に描いているからだ。『やこうれっしゃ』は文字がない分だけ、読み手の自由が大きい。裏表紙に「4歳〜おとなまで」と記してあるとおり、子どもは子どもなりに、大人は大人なりに、さまざまなコトを想像/創造しながら楽しむことができる。

 

やこうれっしゃ

これもいかが
がたごとがたごと
おふろやさん
ぼくらの地図旅行
絵で見る日本の歴史
絵で読む広島の原爆

うみのがくたい

うみのがくたい:大塚勇三/丸木 俊

海のどこかを船が通ると、不思議な音楽がきこえてくる。それはなぜ?

音楽が大好きな船乗りたちと、かれらの音楽を聴きに集まるさかなたち、くじらたちとのほのぼのした交流。あらしの夜、さかなたち、くじらたちに助けられた船乗りたちは、お礼のしるしに楽器を海に投げ込んでやる。チェロを弾くいるか、ラッパを吹くくじら…。うみのがくたいの誕生だ。
丸木 俊というと、一般には『原爆之図』のイメージが強いだろう。しかしかの女は絵本や挿絵の仕事も少なくない。この絵本でも暖かい色彩に満ちた幸福感あふれる世界を描き出す。子どもが描いたかのような自由なデフォルメが楽しさをかきたてる。

 

うみのがくたい
うみのがくたい(CD付き)

ひろしまのピカ
いのちの花
ふえをふく岩
丸木 俊―女絵かきの誕生

おじぞうさん

おじぞうさん:田島征三

おうめばあさんは孫のじろっぺのねしょんべんが治るように、おじぞうさんに願をかけた。ところがおそなえの大福もちがあんまりうまそうだったので、おじぞうさんは思わずよだれをたらり…。
そのよだれが発端となって次々ととんでもない事件が起こる。田島のひょうきんな絵(並のひょうきんさじゃありません!)と奇想天外な展開に子どもたちは大喜び。田島本人かと思われる寝ぼけた絵かきも登場。画面いっぱいにイカれたパワーを炸裂させる。はたしてじろっぺのねしょんべんは治るのか?
月刊予約絵本《こどものとも》304号。1981年の初出だからずいぶん古くなったものだ。しかしこの大迫力は不滅。

 

おじぞうさん

オオカミのごちそう
オオカミのともだち
オオカミのひみつ
とべバッタ

ふるやものり

ふるやのもり:瀬田貞二/田島征三

「ふるやのもり」という言葉は、わたし自身なんのことかわからなかった。いや、子どもの頃の話だけどね、もちろん。で、オオカミやどろぼうがじいさんばあさんの会話を理解できないのが理解できたわけだ。
それはさておき、田島のワイルドな絵(グワッシュと思われる)が素晴らしい。モノトーンに近い限られた色数でなつかしい昔話をわくわくする大活劇に生まれ変わらせている。スピード感、力強さ、デフォルメ、どれをとっても田島ならではの迫力だ。
いかにも悪そうなどろぼうとオオカミがあわてふためくようすがおかしいので、子どもたちによくウケる。

 

ふるやのもり

ふきまんぶく
しばてん
やぎのしずか

瀬田貞二のおすすめ
おだんごぱん

だいくとおにろく

だいくとおにろく:松居 直/赤羽末吉

『だいくとおにろく』は何種類もあって迷う、というなら赤羽末吉をおすすめ。赤羽は日本の絵本界の至宝といえる存在だ。国際アンデルセン賞画家賞を日本人で初めて受賞したほどで、世界的に高く評価されている。
日本画の伝統が活かされているのが特徴で、こんなひょうきんな絵を描いても格調の高さ、上品さ、やさしさを失わない。かれほど作風から人間性がしのばれる画家もめずらしいのではないだろうか。
名作が多い中で、3〜4歳くらいから読んであげられるのがこれ。話が単純で理解しやすいし、大工が鬼をやりこめる(大工は鬼の秘密をひょんなことから知っていた)シーンのリズミカルなやりとりが楽しい。
右に示した低年齢向けの作品もいずれ劣らぬ☆☆☆☆☆レベル。太鼓判を押します。

 

だいくとおにろく

つるにょうぼう
くわずにょうぼう
かさじぞう
みるなのくら
そらにげろ

ふりむけばねこ

ふりむけばねこ:井上洋介

『くまの子ウーフ』でおなじみ井上洋介の隠れた名作絵本。角の食堂に猫がいて/傘やさんにも猫がいて/時計やさんにも猫がいて…。ずいぶん猫の多い町だ。でも、魚やさんにも猫がいるって、だいじょうぶ?
いいんです。だってそこは猫町マタタビ通り。住民はみんな猫!!! なんだから。

ぐいぐい彫り込まれた粗いタッチの版画が秀逸。風景は昭和初期だろうか。懐かしい風景とハイカラな猫たちが織りなすノスタルジックで幻想的な猫世界。ときに思いがけない色使いもあって、魔法にかけられたような時間が流れていく。
ストーリーはまったくなし。それでも子どもたちは楽しそうに頁をめくっていく。もちろん大人が見ても見ごたえのある美しい絵本。

○左は初出時の「こどものとも」342号。1984年の発行だった。

 

ふりむけばねこ

くまの子ウーフ
でんしゃえほん
かっぱのめだま
ぐるりかぜ
ねこじゃら商店へいらっしゃい

ねこじゃらを見て連想した…
ないもの、あります

 
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