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ra ta ta tam

Ra ta ta tam: Nickl/ Schroeder
The Strange Story of a Little Engine

ビネッテ・シュレーダー比較的初期の作品。 シュルレアリスムの画家レオノーラ・カリントンを思わせる暗いトーンの幻想的な世界が展開される。シュレーダーはカラフルなワニの絵本“Crocodile, Crocodile”も楽しいけれど、マスターはこの作品の幻想性に惹かれる。主役が人間でも動物でもないっていうのも、面白い。
親指トムみたいに小さい男タイニーは天才発明家。水中櫂付き機関車や足こぎプロペラ気球を作って、町では有名な男だった。しかしかれが一番好きだったのは蒸気機関車。町はずれの機関車工場に潜り込み、雪のように真っ白な小さい機関車を作ってしまう。その機関車の所有権をめぐって工場主とけんかしたタイニーは、気球に乗って町を出ていってしまう。やさしい人たちのいるところを求めて。
物語はタイニーを追いかけて旅を続ける小さい機関車が主役だ。ラタタタム、ラタタタム…。タイトルは機関車の走る音。いかにも欲深そうな工場主や石炭で真っ黒けになった町があらわれ、メッセージ性の濃いストーリー。文章では何も言っていないのだが、読み手にいろいろ考えさせる。このトシになってもつい考える(笑)。
機関車はようやく雪深い山の上の村でタイニーに再会。小さい機関車は今でもタイニーと友人たちを乗せて山を登ったり降りたりしているのさ。ラタタタム、ラタタタム…。

 

Ra ta ta tam(英語版)
Ra ta ta tam(ドイツ語版)
ラ・タ・タ・タム

美女と野獣
お友だちのほしかったルピナスさん
Lupinchen
Crocodile, Crocodile
The Frog Prince
Laura

The Art of Binette Schroeder

ぼくはくまのままでいたかったのに

ぼくはくまのままでいたかったのに…:シュタイナー/ミュラー

冬眠から目覚めたとき、くまは自分のほら穴が工場の敷地内にあることに気づいた。眠っている間に工場が作られていたのだ。のそのそ這い出したくまは職長に見つかり、職場にもどれと命じられる。くまは自分がくまであることを主張するのだが…。
工場の社長はくまとはどういうものなのかを示すため、動物園やサーカスにくまを連れていく。くまとは檻の中にいるもの、あるいは芸をするものなのだ。 だからおまえはくまじゃない。おとなしく機械の前ではたらけ、怠けものめ!

子どもが読むか大人が読むかで受けとめ方が大きくちがってくるのが特徴だ。ひげを剃らされ、ほかの労働者たちといっしょに働かされるくまは、大人にとってはちっとも滑稽じゃない。人間によってねじ伏せられる自然の象徴のように見えてくる。
あぁ、とうとうクビになっちゃったよ…。あわれなくまはもとどおりの平穏な森の生活にもどれるんだろうか。心配になってしまうのは子どもも大人も同じ。

◎シュタイナーとミュラーのコンビはほかにも自然破壊をテーマにした絵本
 “Rabbit Island”を発表している。

 

ぼくはくまのままでいたかったのに…
The Bear Who Wanted to Be a Bear

うさぎの島
Peter and the Wolf

 

せいめいのれきし

せいめいのれきし:バージニア・リー・バートン

バージニア・リー・バートンというと名作『ちいさいおうち』を思い出す。いなかの丘の上にぽつんと建っていた家が都市化の波に呑み込まれていくようすを描いた、美しくもせつない物語だった。

おなじ時の流れを描いた絵本でも、『せいめいのれきし』は壮大なスケール。太陽が生まれ、地球ができて原始生命が誕生し、恐竜の時代や氷河期を経て現在にいたるまでが、あのおなじみのあたたかいタッチで描きつづられる。
見開きの右のページが劇場のステージになっていて、全5幕34場の歴史ドラマが演じられるしかけ。ステージの袖に弁士がいるので、恐竜や古代生物の大きさがわかる。左ページにはそれぞれの場面の解説がついている。わかりやすいけれどかなり専門的。
小学生から読めるだろうが、中学生でも大人でも楽しめるし、役に立つ。地球誕生や生命の変遷は理科の内容、米国開拓史や農業の話題は社会科の内容だ。子ども向けの科学への導入絵本として、たいへん優れた一冊だといえる。
勉強を離れても、よく描き込まれた絵はずっと見ていて飽きることがない。人間を含めたさまざまな生命の謳歌で終わっているあたり、晩年の作者の心情を見る思いがする。無人島の一冊にどうぞ。

  せいめいのれきし
Life Story

ちいさいおうち
The Little House
名馬キャリコ
Calico the Wonder Horse
ちいさいケーブルカーのメーベル
Maybelle the Cable Car
いたずらきかんしゃちゅうちゅう
Choo Choo: The Story of a Little Engine Who Ran Away
運命の王子

運命の王子:リーセ・マニケ

大英博物館所蔵のパピルス文書にあるおとぎ話を絵本にしたもの。3000年以上昔に書かれた冒険譚で、当時のエジプト人の死生観が反映されていると思われる。
息子のいない王が神によってひとりの赤ん坊を授かるが、女神ハトホルによってワニかヘビか犬に殺されると運命づけられてしまう。自らの運命を知った王子は冒険の旅に出てナハリン(現在のイラク)にたどりつき、その地の王女と結婚するのだが…。

リーセ・マニケは当時のレリーフや壁画などから古代エジプトの物語を再構築していく(巻末に画像の出典が紹介されている)。すべての絵が当時の様式にのっとって描かれているわけだ。顔は横向き、目は正面向き、肩も正面向きで腰から下は横向きという、あのスタイル。そして目の覚めるような色使い。中東の強烈な陽射しを感じさせるあざやかな色彩が、太古の物語をいきいきと描き出す。
各ページに原文である象形文字が書かれている。まったく読めないのだが(ふつう読めないか)見るだけでも楽しい。

 

運命の王子―古代エジプトの物語
The Prince Who Knew His Fate

ライオンとねずみ
The Lion and the Mouse
古代エジプトの音楽
Music and Musicians in Ancient Egypt
The Ancient Egyptians

ベッドのしたにワニがいる

ベッドのしたにワニがいる!:ディーター・シューベルト

パパ、ママ、おやすみなさい。自分の部屋にもどった女の子は、ベッドの下に大きいワニを発見!目をまん丸くする女の子にワニは笑いかける。いっしょに遊ぼうぜ。
ワニは女の子と一緒にお風呂に入ったり、ロックンロールを踊ったり、たっぷり遊んで楽しませてくれる。どうもこのワニ、毎晩いろいろな子どもの部屋を訪れて遊んでいくらしい。ワニ君じつはたいへんないたずら者で、罰として動物の世界から追放されていたという。罪をつぐなうため、かれはワニの長老からある使命を与えられていたのだ。
 色鉛筆のほんわかしたタッチで描かれるひょうきんでダイナミックなワニの七変化。絵を見ただけで思わず吹き出す(ほんとにおかしい!)いたずらっ子ワニの多彩な表情が楽しい。こんなワニなら毎晩でも遊びにきてほしいよな〜。子どもならそう思うだろう。ワニと子どもの共有する秘密が大人には知られないまま、というのもいい。

 

There's a Crocodile Under My Bed!

ぼくのばけつあながあいてる
There's a Hole in My Bucket
ぼくのおさるさんどこ?
Where's My Monkey?

エミリー

Emily's Good Nightmares: Rob Reger

ネット・アイドル(?)エミリー3冊目のストーリーブック。『素敵な悪夢』とはいかにもエミリーらしい。さすがに夢も普通じゃないんだな。屍鬼たち(漢字にすると怖い!)のカーニヴァルで始まり、次々と摩訶不思議な情景が描かれていく。
今回の特徴はヴィジュアルなパロディの多さ。エッシャーの異次元空間、北斎の富嶽三十六景 、ビートルズのイエロー・サブマリンなど、見覚えある作品が巧みにエミリー化されていく面白さ。いつもの黒猫たちもすっかり怪物化してしまっている。こわいい!
もうひとつの見どころはエミリーの脳みそ解剖図。やはり頭の中身もストレンジだったか!超感覚増幅器、GPSスクランブラー、心眼、101の悪知恵、タイムカプセル、不快嗜好、心の峡谷、頭の体操、作動しない配線…、謎に満ちたエミリーの脳みそが今あきらかに!え、イカレてる?もの思う少女の頭はフクザツなんですよ。
さ、あなたもエミリーを読んで Have a bad dream !

 

Emily's Good Nightmares

Emily 2006 Calendar
Bad Girl Gone Worse
Wheel of Misfortune Door Sign

エミリー・ザ・ストレンジ

Emily's Book of Strange: Rob Reger

表紙見返しの部分にエミリーの'morose code'(不機嫌暗号?)の一覧がある。これらの謎の記号は本文ページにニスなどで印刷されているので、意味がわからなかったらこれを見よということなんだろう。面白い記号ばかりだが、黒猫ニー・チェーをあらわす記号はNに組み合わせた十字架に下向きの矢印がついている。『アンチ・クリスト』か!
じっくり見ていくと細かい仕掛けやギャグが多くて飽きない。たとえばエミリーのプリンタにはESPONとロゴがある。これはESP(超感覚的知覚)がONになっているのだ。かの女の部屋に棲んでいる(飼育されている)蜘蛛たちの名前も凝っている。子どもにはとうてい意味がわからないだろう。教養が必要?そうかも知れない。エミリー・ディキンソンのポートレイトが飾られているのが何を意味しているのか、ただの絵本だと思っている人は気づかないんじゃないかな。米国の詩人ディキンソンはひきこもりの生活を送った女性で、死を見つめた作品を多く書き遺している。そう考えてくると、エミリーという名前も重い意味をもってくる。フォークナーの死を扱った短編『エミリーに薔薇を』のヒロインを連想したり。
対象が「ヤングアダルト」という意味不明な指定があるが、読む人の知識によって楽しみ方がずいぶん変わってくるだろう。そういう意味で奥の深い絵本だといえる。

 

Emily's Book of Strange

こんなエミリーも
ふたりのエミリー

岩波文庫で
[対訳] ディキンソン詩集
[対訳] アメリカ名詩選

エミリー・ザ・ストレンジ

Emily the Strange: Cosmic Debris

『風変わりなエミリー』最初のストーリー・ブック。黒・赤・透明ニスという限られた使用色でインパクトある効果を挙げ、グラフィックにたずさわる者をあっと言わせたベストセラーだった。(つい書き方に商売が出てしまう!)
黒は夜の色、闇の色であり、赤は血の色、情熱の色である。そして透明は幽霊の色であり不在(≒死)の色である。黒装束の少女と真っ黒な猫たちは不吉な存在、縁起でもない登場人物なのだ。欧米人と日本人では受けとめかたが違うと思うが、邦訳もよく売れたっけ。ウタダ訳をめぐって賛否両論だったのは記憶に新しいところ。
不機嫌な少女ってのはしかし、わからない人にはわからなかった。しあわせに育った人はエミリーがひねた子どもにしか見えなかったのだろう。かわいくない、なんて。一方でエミリーに共感する人も少なくなかったわけで、マスターもそのクチ(笑)。世の中明るすぎると見えなくなってしまうことがあるんですよ。
最後のほうに4匹の黒猫の紹介がある。最古参はミステリー、耳の欠けているのはサバス(=サバト→ユダヤ教の土曜日を指すが魔女が集会を行う日でもある)。ニヒリストのニー・チェーというのもいる。誰をもじっているかわかるよね。マイルズという黒猫は創造的天才で街いちばん足が速い。これはマイルズ・デイヴィスだろうな。

  Emily the Strange
エミリー・ザ・ストレンジ
日本の歴史

絵で見る日本の歴史: 西村繁男

西村繁男の最高傑作かも知れない。先史時代、縄文時代から現代までの日本が横開き大パノラマで描かれているのだが、描写の細かさがただごとではないのだ。屏風絵や絵巻物を見るような面白さといったら分かっていただけるだろうか。
たとえば洛中の土一揆を主題にした室町時代の頁。石つぶてを投げる農民の一団があり、鎮圧に向かう武士たちとの小競り合いが描かれる。男が証文を破っているのは高利貸しの家だろう。烏帽子屋、材木屋などの店(たな)が並び、酒屋には農民たちがなだれ込んで酒の原料である米を俵ごと盗み出そうとしている。酒屋の庭には大きい結桶(ゆいおけ)が見え、醸造業の発達の様子を示している。
のどかな農村の様子や町屋(まちや)の暮らしが描かれた頁もあり、時代が下ると文明開化、第二次大戦の空襲の頁も出てくる。いずれも綿密な時代考証に基づいており、各地の博物館、資料館、大学などから資料の提供を受けている。歴史学習の副読本としても使える信憑性の高い絵本といえる。
文字はほとんどないが絵が多くを語っており、たいへん分かりやすい。後ろの頁に簡略な解説があるので、小学生でも高学年なら自力で無理なく理解できるだろう。大人ならなおさら楽しめる。つい時間を忘れるくらいに。

 

絵で見る日本の歴史
絵で見る日本の歴史(英語版)

はらっぱ
雪むかえの村
やこうれっしゃ

 
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