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文芸その他
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元禄世間咄風聞集:長谷川
強(校注)
表紙の絵は傾城高尾の道中姿。有名な吉原の太夫の三代目で、破格の金額で身請けされるが出奔、数々の男遍歴ののち行き倒れて死んだといわれる人物だ。かの女を身請けした大金持ちの町人が目明かしにゆすられたという話が載っている。
本書は元禄7年から16年にかけての、いわば三面記事の抜き書き。ほんのメモていどのものからその場にいたのかと思うほど詳しいものまで、内容も上記のような町人の話題から天変地異、事件・事故、落首の紹介、武家社会の腐敗のさままでと幅広い。公式記録ではないのでつくろった表現になっていないのが面白い。簡単に刀を抜いてしまうアホな武士の話が多いのも三面記事ならではだろう。のちに落語や講談の題材となった話も含まれており、あれは史実だったのかと目から鱗の思い。狐に化かされたなど文字どおり〈風聞〉にすぎないと思われる話もあるが、それはそれで当時の人々の心情をあらわしている。
最大の興味は浅野内匠頭の刃傷事件だろう。この事件の最も早い時期の記述であり、脚色がないため史料として価値がある。「殿中でござるぞ」とは誰も言わなかったようだし、世間の反応も内匠頭を悲劇のヒーローと捉えるよりむしろ批判的だったことがわかる。珍しくもない武家の愚行のひとつだったのだろう。のちに『元禄快挙録』などが書かれ、半ばフィクションとして受容されていく過程で評価が変わっていったのだ。
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<岩波文庫>
元禄世間咄風聞集
江戸時代奇談珍談集
耳袋〈1〉平凡社ライブラリー
耳袋〈2〉平凡社ライブラリー
『元禄快挙録』
元禄快挙録〈上〉岩波文庫
元禄快挙録〈中〉岩波文庫
元禄快挙録〈下〉岩波文庫
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義経記:島津久基(校訂)
現代の我々が共通して持っている義経イメージの原形は『義経記(ぎけいき)』によって作られたといわれる。いわく絶世の美男、ひ弱な貴公子、悲劇の英雄。ただ全編を通して読んでいくと、巻が変わるごとに義経イメージが変わってしまう。非情なまでの武将として描かれたり、優柔不断なおぼっちゃまとして描かれたりするのだ。なぜ人物像が一定しないのかについては角川源義らの著書に興味深い分析がある。
完成度において傑作『平家物語』には及ばないものの、軍記物として充分楽しめる面白さ。思いのほかスリリングなのだ。話を聴きに集まった民衆の反応を見ながら表現をエスカレートさせていったのだろう、あり得ない武勇が次々と語られる。
いっぽう愁嘆場の描写も日本文芸の典型を見る思いがする。情を前面に出した涙、涙の物語。このしつこさは歌舞伎がみごとに受け継いでいる。全体の語り口は講談に近いもので、声に出して読むともとが口承文芸だったことが納得できる。
○写真の岩波文庫は1939年の初版。旧字が使われているので慣れない人には読みづらいかも知れない。現代語訳はついていない。
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<岩波文庫>
義経記
現代語訳
義経記(河出文庫)
大塚ひかりの義経物語
義経記―まんが古典文学館
義経と弁慶(物語絵本)
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源義経:上横手雅敬(著)
源平内乱と英雄の実像
バブル期に出版された豪華本の文庫サイズ化。当然ながらだいぶ小さい。オールカラーだった写真や図版はすべてモノクロになってしまった。ただオリジナルが高精細だったため、モノクロでもかなりきれいに出ている。絵巻物、能や歌舞伎の舞台写真、甲冑や史跡の写真などで、それぞれに懇切な解説がある。
源義経の生涯はほとんどが伝説に彩られており、源平の合戦における活躍以外は史実として信ずるに値するものがない。本書は各地に伝わる義経伝説や『義経記』『平家物語』『源平盛衰記』『玉葉』などを手がかりに義経の生涯を明らかにしていこうというもの。史書である『吾妻鏡』を、伝説の引き写しが多い、執権北条氏の意向が反映された創作として退けている点、源氏の成立から滅亡までの長いスパンのなかで義経の生涯をとらえようとしている点に特徴がある。
美男子で悲劇の英雄というイメージはくつがえされる。われわれが持っている一般的な義経像はおとぎ話でしかない。頼朝・梶原景時=悪、義経・弁慶=善という単純な図式も物語化の過程で生じたものにすぎない。そもそも弁慶という僧は実在したのか。子どものころ『牛若丸』を読んでインプットされた義経像は後世のさまざまな創作が総合されたものだった。
類書が多いので比較すると内容があっさりしているように感じられる。しかし読み手に予備知識が少なくても理解できるというのが本書の利点だ。これから初めて義経の実像に迫ってみようという人にはおすすめ。武家政権誕生の頃の世相・文化を知ることもできるので、日本史全般に興味のある方も楽しめるだろう。
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<平凡社ライブラリー>
源義経―源平内乱と英雄の実像
類書を見る
源平の盛衰
源義経
流浪の勇者―京都・鎌倉・平泉
義経の登場―王権論の視座から
保元・平治の乱を読みなおす
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源義経:角川源義・高田
実(著)
2005年1月発行。便乗出版と思われてもしかたないし、事実そうなのだろう。しかし本書は山積み状態の便乗本の中では出色であり、義経個人ではなくて日本史や国文学に興味のある人にも貴重な再刊だ。初版は単行本として1966年に出ていた。
本書は国文学者・民俗学者の角川源義と歴史学者の高田実との共著である。義経誕生から源平の合戦前夜まで、および追放から奥州での死までを角川が担当。歴史書に記された範囲を高田が担当している。
『義経記』を読んで気づいた不自然さ、つまり義経が美男になったり醜男になったり、残酷な武士になったりひ弱な貴公子になったり、逃亡中なのにわざわざ遠回りをして霊地を訪れたりといった不自然さの理由が解明される。これは異なる伝承者によって語り伝えられたさまざまな義経物語を『義経記』編纂者が不用意につなぎ合わせたからだった。
盲僧や座に属する口承文芸者たちは、全国を巡ってそれぞれオリジナルの義経物語を語っていた。自分の所属する信仰集団の信者を増やし、寄進をすすめるために、霊験あらたかな寺社が義経一行を救う話が創作されたのだ。北国落ちで義経が弁慶がいなければ何もできない頼りない存在になってしまうのは、北国落ち物語が弁慶が代表する熊野山伏の管理下にあったことの証左であると。たしかにそう考えないと、弁慶の出自について妙に説明が長かったり、忠信の武勇を語って主人公が消えてしまう巻があることの説明ができない。
高田の担当した部分に関しては、史書にある誇張を廃してより真実に近づこうとするもの。右大臣兼実の日記『玉葉』の引用が多いのはそのためだ。数万騎とされる軍勢が実際は数千騎であったなど「物語」と実際との落差が指摘される。同じ『玉葉』の記述から、都では義経の存在が知られていなかったことが判る。義仲追討のため上洛するという知らせを聞いても、義経ってだれさ、という状態だったらしい。
頼朝の政治家としての手腕を評価するというのは、今では目新しくもなんともない。判官びいきどっぷりの義経ファンならいざ知らず、である。後白河法皇の深謀遠慮についても、配慮からかあまり触れられていない。しかしそれらを差し引いてもなお、本書には示唆に富む記述が多い。とくに国文学に興味のある人には。
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<講談社学術文庫>
源義経
原典を読むのがしんどい人に
現代語訳
義経記
大塚ひかりの義経物語
義経記―まんが古典文学館
平成9年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞作!
吾妻鏡(上)―マンガ日本の古典
吾妻鏡(中)―マンガ日本の古典
吾妻鏡(下)―マンガ日本の古典
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鼻行類:ハラルト・シュテンプケ(著)
新しく発見された哺乳類の構造と生活
ハナアルキという生き物をご存知だろうか。南太平洋で発見された、独自の進化を遂げた哺乳類である。その名のとおり鼻で歩く奇妙な生き物たち。四肢が歩行の役目から解放されたため、退化したり捕虫用に特化したり、多様なハナアルキが誕生した。樹上生活をするタイプも特殊な脚をもつ。身体はたいてい小さい
学術的に分類された多種多様なハナアルキの詳細なスケッチとその生態が緻密に記録されているが、その姿は容易に実在が信じられないほど風変わり。ひ弱そうだし、天敵がいないからこそ生き残ることができたと考えられる。
進化の初期にあたる原始的ハナアルキの化石も発見され、進化のプロセスの解明が期待されたのだが、島は地殻変動によって海底に沈んでしまった。研究の途は閉ざされた。
そこの疑い深いあなた、笑ってますな。マスターがかつて『鼻行類』のハードカバーを購入したのは某大型書店の生物学コーナー。訳者は動物行動学の学者さんだ。心せよ。信ずるものはだまされる。
最近アフリカ南部でカカトアルキという生物が発見された。こちらは昆虫だ。まだアフリカ南部は水没していないので、見たい人は行くことができる。
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<平凡社ライブラリー>
鼻行類
幻の生物を知る参考文献:
標本写真満載の本
幻獣標本博物記
復元イラスト満載は
絶滅哺乳類図鑑
植物はこちらを
平行植物
これはもはや古典のうち
幻獣辞典
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インディアスの破壊についての簡潔な報告:ラス・カサス(著)
20年ほど前、半分も読まずに放り出した本。最近『インカの反乱』や『アメリカ先住民のすまい』を読んだので思い出し、久方ぶりに買いなおし、読みなおした。読み始めてすぐ、なぜあの時へこたれたのかがわかった。うんざりしてしまったのだ。
中南米各地でスペイン人征服者たち(ベネスエラはドイツ人たち)が行った残酷な掠奪、虐殺のさまがしつこく描かれていて、読み進む気力が失せてしまう。とはいえ、ラス・カサスの告発から目をそらすわけにはいかない。栄光の「大航海時代」は語りたいが、その裏にあった「闇の歴史」には触れたくない。スペイン人はそんな気持から、ラス・カサスを正当に評価してこなかった。しかしかれは、ただスペインの歴史の汚点をさらけ出しただけではない。文明人と称する人々の果てしない欲望や欺瞞を糾弾しているのだ。他民族・他人種に対して優越感をもったとき、人間がこんなに非情になることができるとは。ナチスのホロコースト、大陸での旧日本軍の蛮行、北米での先住民大量殺戮…。
ラス・カサスはもちろんスペイン政府や国王に対して困窮するインディオの保護を訴えているのであって、文明云々の話はしていない。インディアスがスペイン国王の持ち物であることを認めており、植民地化の是非を問うてはいない(むしろ平和的植民を進めようとしている)。聖職者としてインディオのキリスト教化を当然の責務と考えてもいる。「真の神」を知らずに殺されていくインディオへの憐憫など、宗教的優越感以外の何ものでもない。
だからこんにちの読者、ことに異教徒の読者からすれば、ラス・カサスの姿勢には共感できない。かれの立場や時代を知った上で、自分なりの視点をもち、自分なりに考えなければならない。遠い過去の話として片づけられない重くて深い問題が提示されているからだ。
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<岩波文庫>
インディアスの破壊についての簡潔な報告
参考文献
物語
ラテン・アメリカの歴史
米国先住民の歴史
アメリカ・インディアン悲史
小説で読む
インカ帝国の滅亡
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アメリカ先住民のすまい:モーガン(著)
題名の通り、ヨーロッパ人がインディアンとかインディオと呼んでいた人々の住居についての調査記録。図版が多数収録されている。地域により、部族により、さまざまな素材を使用したさまざまなタイプの住居が造られていたことがわかる。たとえばプエブロ・インディアンと呼ばれた人々の住居は巨大な石造建築であり、今でいうマンションに一族が共同生活をするような形態だった。
しかしもっと興味深いのは、かれらの住まいのあり方を通して見えてくる平和共存の暮らしぶり。たとえばアイヌのような狩猟採集民は、土地は誰のものでもないと考えていた。一方農耕を行っていた米国先住民は、土地はみんなのものと考えていた。共有地を家族単位で分けあって耕していたのだ。余剰生産分は管理され、困窮している人のため、客人や旅人のために使われた。新大陸に渡ったヨーロッパ人が気前のよい先住民に十分な食糧を与えられ、親切にもてなされたという記録は、征服者たちの書いたものの中にさえ残っている。しかしかれらのやさしい心根は「文明人」の心を動かすことはなかったのだろうか。この本(原著)が書かれた19世紀の終わり頃、かれらの住まいのほとんどは廃墟となっていた。
力のあるものが勝利し、負けたものは死ぬか被支配民として失意のうちに生きるしかない。そんな価値観はかれらには無縁のものだったのではないか。本書は文化人類学の観点から書かれているけれども、ついそんなことまで考えさせられてしまう。
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<岩波文庫>
アメリカ先住民のすまい
参考文献
虹の戦士
アメリカ先住民の精神世界
奪われた歴史―アメリカ先住民(マンガ)
ネイティヴ・アメリカン―写真で綴る北アメリカ先住民史
本多勝一:アイヌ民族
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インカの反乱:ティトゥ・クシ・ユパンギ(述)
被征服者の声
ヨーロッパ人による新大陸征服のさまは、征服者たちの側の人物によって書かれたものがほとんどだ。本書は滅ぼされていく側の人物、インカの皇帝ティトゥ・クシ・ユパンギの言葉を記したもの。珍しい記録ということができる。
インカにはビラコチャ伝説というものがあった。昔々長身白面で立派な身なりをした神が訪れ、かれらに文明を伝えたというものだ。(カナリア諸島でインカに類似した文明の痕跡が発見されたことから、最近の学説には白人が中南米に渡って文明を伝えたと考えるものがある。)先住民はスペイン人たちをビラコチャもしくはその使いと思い、丁重にもてなした。スペイン人たちは好都合な伝説を利用して容易に優位な地位を獲得する。
金銀財宝を差し出せといえばすぐ出てくるのだからうまい話だ。しかし善意の範囲で満足するスペイン人たちではなかった。ティトゥ・クシの父である皇帝マンゴ・インガ(アタワルパ処刑後のことなのでネオ・インカとも呼ばれる帝国の皇帝)を捕らえてそれ以上の財宝を要求するのだ。あげくは皇帝の妻を差し出せと。
数では勝る先住民がたやすくスペイン人たちに屈していくさまを見るのはやりきれない思いがする。口約束を信じ、そのたびに裏切られるインカの人々。スペイン人たちは帝国の内紛をも利用して殺戮をくり返し、インカを弱体化させていく。
本書後半はスペイン人たちに殺されたマンゴ・インガの後を継いだティトゥ・クシがスペイン国王に宛てた請願書のようなもの。ティトゥ・クシはスペイン国王への臣従を認めざるを得ず、インカ皇帝としてのせめてもの権利の保証を願い出ているのだ。なんという屈辱。
しかし屈辱的和平は長続きせず、急死したユパンギの後を継いだトゥパク・アマルがロヨラ(イグナツィオ・デ・ロヨラの甥)に滅ぼされてインカ帝国は消滅する。
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<岩波文庫>
インカの反乱
トゥパク・アマルについて
インカの反乱(寺田和夫)
ボリュウムのある…
インカ帝国崩壊
アステカとインカ
黄金帝国の滅亡
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Oxford
Learner's Pocket Dictionary
手のひらサイズの英英辞典。タイトルどおりの学習者用なのだが、30,000語という日常的使用に充分な語数を収録。発音や米語の綴り、さまざまな用例まで載っている。初級者が「英語で考える」習慣を身につけるには手頃で便利な一冊だ。
マスターの場合、これをデスクの上に出しっぱなしにしている。おもにうろ覚えの単語の確認用だ。綴りや用法に間違いがないか調べるときにも使っている。難しい単語や専門用語の載った分厚い辞書はめったに使わない、という人はこれを手の届くところに置いておくといいと思う。
改訂されるたびに新しい語彙が収録されるので、ときおりチェックしてみよう。買い換えるにも「思い切って」買うような金額じゃないのがいい。
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Oxford
Learner's Pocket Dictionary
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