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文芸その他

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ローデンバック集成

ローデンバック集成:高橋洋一(訳)

ベルギー象徴派の詩人ジョルジュ・ローデンバック(1855-98)の代表作『死の都ブリュージュ』を収録。コルンゴルトのオペラ『死の都』の原作でもある。1892年にパリで発表されたこの小説によって、ローデンバックは一躍文壇の寵児となった。耽美的で情欲と死の匂いに満ちたこの作品は世紀末ヨーロッパの嗜好にふさわしかったのである。
ブリュージュはローデンバックの父祖が住んだ街。かつて水都として繁栄を誇っていたが、今や活気を失った死の都と化している。そこに妻を亡くした男ユーグが移り住む。打ちひしがれ、追憶の日々を送る中年男は灰色の街ブリュージュの風景に溶け込んでいる。しかし亡き妻とうり二つの踊り子ジャーヌに出逢うことで、歯車は狂い始める。男は女に亡き妻を重ね合わせ、往時の愛の日々を再現しようとする。しかしその試みは追憶の重みとカトリックの枷によって押し潰され、破綻していく。現実を見ようとしないユーグがみずから招いた破滅でもあるのだが、ブリュージュという街がもう一つの主役であると作者が主張するように、時が止まってしまった街が主人公の追憶からの逸脱を赦さなかったとも思える。

本書には短編集『霧の紡ぎ車』やエッセイ、日記などが併録されている。世紀末のデカダンスに沈む耽美的な世界はこれらの作品も同様。そして目立つのが女の髪の毛への執着だ。『死の都ブリュージュ』でも亡き妻の遺髪が生きているかのごとく重要な役割を果たすが、ローデンバックにとって髪の毛は単なるモノではない。髪の毛が象徴するのはエロスとタナトス。本書のカヴァーはフェルナン・クノップフによるブリュージュの石橋。『死の都…』にはクノップフの挿画が付されていたのだが、かれもまた髪の毛に執着を見せる画家だった。

 

<ちくま文庫>
ローデンバック集成

コルンゴルトのオペラ
『死の都』

ビリティスの歌

ビリチスの歌:ピエール・ルイス(著)

『ビリチス(ビリティス)の歌』はクラシックファンにはドビュッシーの歌曲集で知られている。ピエール・ルイス(1870-1925)が架空のギリシア詩人ビリティスの作品として発表したもので、出版当初はちょっとした問題を惹き起こした。ルイスは出版に当たって「ギリシア古詩:ピエール・ルイス訳」と記していたからだ。人々はギリシア語からの翻訳と信じ込み、ビリティスなる女性詩人がかつて実在したものと思ったのだった。24歳の青年のたくらみは多くのインテリたちさえ騙しおおせたと伝えられる。ビリティスの生涯を紹介し、いくつかの詩に「翻訳不可」と記したり、信憑性あるものと思わせるテクニックが弄されていたのだ。
ルイスは古代ギリシアやローマについて相当な知識を蓄えていたらしく、選ばれた単語の一つひとつはもとより人々の生活、風物の描写やおおらかな性の謳歌などによって、いかにも古代らしい世界を描き出してみせている。そう、奔放とも言える性が、この作品の大きな特徴の一つなのだ。詩の内容はビリティスの生涯を追っていく。うぶな乙女時代に始まり、同性愛に移り、やがて娼婦の生活が描かれる。舞台がレスボス島だったりしてサッフォーを意識したとも思えるが、ルイス自身の奔放な性遍歴を反映したものと考えられている。

おお、わが肉体よ、官能的なお前の使命に従つて、身を横臥(よこた)へよ。味わひとれ、その日その日の歓楽と、明日を思はぬ情熱を。たつた一つの歓びを逸した為に 死んでいく日に悔恨を 残してはならぬ。

 

<講談社文芸文庫>
ビリチスの歌

女と人形

セプルベダ

カモメに飛ぶことを教えた猫:ルイス・セプルベダ(著)

港町ハンブルクに棲む黒猫ゾルバ。かれはひょんなことからカモメの孤児の母親代わりになる。かれは瀕死のカモメから卵を一つ預かり、3つの約束をするのだ。「卵を食べないこと」「ひなが生まれるまで卵のめんどうを見ること」そして「生まれたひなに飛ぶことを教えること」。
黒猫ゾルバは約束を守り通す。数々の危険から卵を守り、生まれたひなを育てていく。町の猫たち、長老〈大佐〉とその〈秘書〉、百科事典を読む〈博士〉、海の猫〈向かい風〉。クセの強いオス猫ばかりだが、かれらはゾルバに協力を惜しまず、幼いカモメ、フォルトゥナータ(猫たちが名づけた「幸運な者」を意味する名前)に愛情を注ぎつづける。
なぜかれらは命がけでカモメを育てるのか。ゾルバは語る。カモメと猫とは違うものだ。でも違うからこそ愛するのだ。カモメを愛することで、自分たちとは違っているものを認め、尊重し、愛することを知った。自分と似たものを認めたり愛したりするのは簡単だ。でも自分たちは違っているものを愛することができるようになった。自分たちはカモメをカモメとして愛し、その幸せを願っているのだと。
猫たちの愛情を受けてフォルトゥナータはすくすく育っていく。しかし飛ぶ練習だけはうまくいかない。百科事典を頼った〈博士〉の指導はかの女に自信をなくさせるだけだった。猫の力では無理なのか。思いあぐねたゾルバは最後の手段として猫界のタブーを破ることを決心する。それは…。

ハンブルクを愛する作者ルイス・セプルベダ(Luis Sepulveda)は南米チリの生まれ。クーデターによってピノチェト政権が誕生したとき投獄され、獄中生活2年半を経てアムネスティの尽力で解放された。異なるものの排除を身をもって経験している。

 

<白水uブックス>
カモメに飛ぶことを教えた猫

星を見つけた三匹の猫

 

 

 

 

 
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