ブラスバンド、吹奏楽
フィリップ・スパーク   アドマックス「カフェ」  
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ブラス・リンクス

Brass Links
The Hannaford Street Silver Band/ Tovey

購入のきっかけはアイアランドの『ダウンランド組曲』。クラシックのオケによる編曲版録音しか知らず、オリジナル版を聴いてみたかったから。もうひとつはヴォーン=ウィリアムスの『ブラスバンドのための変奏曲』。これも意外に録音が少ない。
ひょうきんなジャケットと見覚えのないバンド名「ハンナフォード・ストリート・シルバー・バンド」に若干の不安を感じたものの、冒頭のカーナウ作品を聴いてひと安心。『ブレナム・フローリッシュ』。このファンファーレをこれだけ歯切れよく演奏できれば文句はない。このバンドは1983年創設で“HSSB”と略称するという。
『ダウンランド組曲』は古典的たたずまいの作品で4楽章からなる。かれの管弦楽作品と同様、力強くて少々地味な印象。楽器の使用法のせいか、ブラスばかりでもあまり派手にならないのだ。このへんが英国音楽好きには魅力。ブラス版を聴いてみて、クラシックのオケが演奏したがるわけが分かった。とくに緩徐楽章。このしっとり感を弦楽に置き換えてみたいと思うのは人情というものだろう。
『ブラスバンドのための変奏曲』はヴォーン=ウィリアムス最晩年の傑作。交響曲を聴いても分かるが、かれは高齢になっても創作意欲が衰えず、時代の息吹を取り込んだ新感覚の作品を書いていた。この変奏曲も同様。各変奏が創意工夫に満ちていて12分という演奏時間が短く感じられるほど。HSSBのきびきびした演奏のおかげでもある。
あと2曲、カナダのクレーシャによる『シンフォニア』とトーヴェイの『バードフィールド・エア』が収録されている。いずれも現代作品。『シンフォニア』はハープとピアノをともなう。形式的にはオーソドックスだが、響きが新しい。金管とハープ、ピアノとの音色の対比を活かそうとしたもののようだ。変奏曲形式で書かれた『エア』は難易度の高い作品。

 

The Hannaford Street Silver Band
Bramwell tovey, conductor

・Recorded in 1996
CBC Records SMCD 5188

Brass Links

『変奏曲』の吹奏楽版は
ドナルド・ハンスバーガー

 
1. Curnow: Blenheim Flourishes
2. Ireland: A Downland Suite
3. Vaughan Williams: Variations for Brass Band
  4. Kulesha: Sinfonia for Brass Band
5. Tovey: The Bardfield Ayre
テディ・ベアのピクニック

The Teddy Bears Picnic
A Musical Menagerie from America's Golden Age

20世紀はじめの米国の、動物を題材にした作品ばかり集めた面白い企画。サブタイトルにあるように楽しい「音楽動物園」だ。
いちばん有名なのはプライアーの『口笛吹きと子犬』だろう。『藁の中の七面鳥』もだれでも聴いたことがあると思う。ただここではベルシュテットの編曲で技巧的なクラリネットピースになっている。ほかにライト・クラシックの人気曲『蛍』(リンケ作曲)もあるし、ジャズファンには『タイガー・ラグ』が気になるところ。全15曲。よく集めたものだ。全体の印象としては子ども向け、家庭向けといった感じ。すぐ親しめる平易な作品、かわいらしい曲が多い。
◎あまり有名でない曲の紹介をいくつか…。
『ノアの方舟の朝』がひょうきんで面白い。夜明けとともにさまざまな動物が目をさまし、方舟の中が次第にさわがしくなっていく。いったい何種類の動物が「吼えて」いるのだろう。チューバが活躍する『象のポルカ』も聴いただけで象と分かる。いかにも重そうでユーモアたっぷり。『鍵盤の上の猫』はシロフォンが活躍。『虫の国で』は、なんとアリさんのピクニック。『ヤマアラシ・ラグ』はラグタイム・ピアノが原曲だ。『牛が鳴くところ』はトロンボーン・シンファニー(symfunny)というおふざけサブタイトルがついている。曲もおふざけ。
気軽に聴けるとはいえ、よく聴けばソリストに高度なテクニックを要求する作品が多く、意外に聴き応えがある。知らない団体だったがニュー・コロンビアン・ブラスバンドの腕前は相当なものである。

 

The New Columbian Brass Band
George Foreman, conductor

・Recorded in 1998
Dorian Recordings
DOR-93201

The Teddy Bears Picnic

♪ The Whistler and His Dog

 

1. Bratton: The Teddy Bears Picnic
2. Rollinson: A Morning in Noah's Ark
3. Pryor: The Whistler and His Dog ♪
4. Kling: The Two Little Bulfinches
5. Bendix: The Magpie and the Parrot
6. Daly: Chicken Reel
7. Laurendeau: Elephantine Polka
8. Eno: In Bugdom

  9. Lincke: The Glow-Worm
10. Johnson: Porcupine Rag
11. Bellstedt: Turkey in the Straw
12. Moreland: Parade on the Doodle-Bugs
13. Fisk: Somewhere a Cow Is Bawling
14. Confrey: Kitten on the Keys
15. ODJB: Tiger Rag
ホルスト Grainger, Holst and Schmitt
The Staff Band of the Norwegian Armed Forces/Aadland

グレインジャー作品とホルストの『1組』『2組』に一つだけフランス製の『デュオニソスの祭』が入るという構成。ノルウェーのバンドによる演奏だ。
第一印象はぱっとしなかった。暗くて重いと感じたのだ。しかし聴きなじんでくるとこの落ち着きが魅力になってくる。とくに『デュオニソス』。ややもするとどんちゃん騒ぎに堕してしまうこの作品が、深みをもってきちんと演奏されているのだ。狂乱の音楽だと思っている人にはもの足りないだろう。ぐいぐい盛り上げてはくるが、血が騒ぐというところまではいかない。ラテン系じゃないからか。
グレインジャーの『岸辺のモリー』は弦楽四重奏が、『羊飼いの踊り』はピアノソロが原曲。さまざまなヴァージョンが流通していて吹奏楽版も人気がある。同じ英国のホルスト作品(定番中の定番)ともども悠々とした足どりの演奏。リラックスしていて北国の快晴の空の下を散歩しているかのよう。
 

The Staff Band of the Norwegian Armed Forces
Eivind Aadland, conductor

・Recorded in 1999
Simax PSC 1208

Grainger, Holst and Schmitt

グレインジャーのピアノ作品
ユージン・リスト・プレイズ
『リンカンシャー』はこちらも
フレデリック・フェネル

 

1. グレインジャー:岸辺のモリー
2. グレインジャー:リンカンシャーの花束
3. フローラン=シュミット:デュオニソスの祭
5. ホルスト:組曲 第1番 変ホ長調

  6. ホルスト:組曲 第2番 ヘ長調
7. グレインジャー:ロンドンデリーの歌
8. グレインジャー:羊飼いの踊り
アンティーク・ブラス

Antique Brasses
The London Gabrielli Brass Ensemble/ Larkin

トランペット4本で奏するサリエリのファンファーレ(45秒)で華々しく開始。あとに続くのはノイコム、クルーセル、ラハナーといった知名度の低い作曲家たち。ロッシーニやベートーヴェン(編曲もの)もあるが、全体に地味な顔ぶれだ。時代はすべて古典派。
変化に富んだブラス作品が並び、トロンボーンアンサンブル、ホルンデュエット、あるいはトランペット・トロンボーン・オフィクレイド各2本ずつの六重奏など、さまざまな編成が楽しめる。大編成のものはない。
曲調は勇ましいものからしっとりした作品までとりどり。ロッシーニ作品に聞き覚えのある旋律が出てくるほかはキャッチーなものは見当たらないが、地味ながらも魅力的な曲が多い。どれも古典派らしく明快でバランスがよい。使用楽器はすべて古楽器。響きが柔らかくてのんびりした印象があるのはそのためだろう。
名手クリスピアン・スティール=パーキンスが参加していて、珍しいスライドトランペットを聴かせてくれる。ほかにもキイ付きビューグル、ハンドホルンなどあまり馴染みのない楽器が使用されている。現代楽器のようにメカニックが整備されていないので、曲によってはかなり吹きづらそうだ。

附記)解説が充実している。なじみのない作曲家・作品が多いのでこれはありがたい。使用楽器の写真が大きければもっとよかった。

 

The London Gabrielli Brass Ensemble
Christopher Larkin, director

・Recorded in 1999
Hyperion Records
CDA 67119

Antique Brasses

ルネサンス期の作品集
Renaissance Winds

 
1. Salieri: Aufzug
2. Neukomm: Quartet
3. Crusell: Horn Concerto
4. Rossini: Duets for Horns
5. Braun & Crusell: Adagio & Polonaise
6. Lachner: Septet
  7. Neukomm: 3 Pieces for Slide trumpet
8. Nicolai: Sonata for 2 Horns
9. Beethoven: Adagio Cantabile
10. Friedrich: Music for Harmoniemusik
11. Crusell: 4 Pieces for the Band
シベリウス、シベリウス

Original 19th Century Music for Brass
The London Gabrielli Brass Ensemble/ Larkin

上記と同じロンドン・ガブリエリ・ブラス・アンサンブルによる録音。楽器編成が曲ごとに異なり、大編成のものがないのも共通する。
シベリウスが多いが、聴き応えのあるのは『序曲 ヘ長調』。トランペット4本にホルンやチューバが加わったオクテットで、変化のある美しい曲。ほかの作品もシベリウスらしい金管楽器用法のうまさが発揮された佳品ばかり。
ベートーヴェンは『エクアーレ』のみ。トロンボーン4本で奏される葬送の音楽。もとは同種の楽器による合奏を意味していたらしいが、このころにはトロンボーン合奏が一般的だったという。ベートーヴェンの葬儀の際、歌詞をつけて演奏されたと伝えられる。
ダヴィッド(1810-76)作品『九重奏曲 ハ短調』はブラス・アンサンブルの魅力が堪能できる佳作だ。金管の得意とする勇壮な表現を活かしたり、チャーミングなワルツ楽章を入れたり、奏者に多彩な表現を要求する。このフランスの作曲家は没後急速に忘れられたと物の本にあるが、この作品は掘り出し物だ。

 

The London Gabrielli Brass Ensemble
Christopher Larkin, director

・Recorded in 1990
Hyperion Records
CDA 66470

19th Century Music for Brass

The London Trombone Sound

 
1. Dvorak: Fanfare
2. Cherubini: Pas redoubles et la Marche 1
3. Sibelius: Overture in F minor
4. Rimsky-Korsakov: Notturno for horns
5. Beethoven: Equale for trombones
6. Lachner: Nonett
  7. Sibelius: Allegro
8. Sibelius: Andantino
9. Sibelius: Menuetto
10. Sibelius: Prelude
11. Cherubini: Pas redouble et la Marche 2
12. David: Nonetto in C minor
バンダ・ムジカーレ

Banda Musicale Aeronautica Militare

最後に入っているパーシケッティの『交響曲』以外、コンチェルトばかり。ポンキエッリの『トランペットとバンドのための協奏曲』、アーティ・ショウの『クラリネット協奏曲』、リムスキー=コルサコフの『トロンボーンとバンドのための協奏曲』、エスポジトの『トランペット小協奏曲』というラインナップだ。
じつは失礼なことに、イタリア吹奏楽のレベルというものを認識していなかった。イタリア空軍バンド。聴いてびっくり、素晴らしい腕前ではないか。指揮者エスポジトの切れ味のよい棒にみごとに応えている。それぞれのソリストもかなりの名手だし、音色が美しいのもよい。
ジャズ・クラリネットのアーティ・ショウが書いた協奏曲は『ラプソディー・イン・ブルー』を思わせる導入部をもつ。ここでの(テンポ・ルバートの)悩ましげな雰囲気が、ちょっと足りない。あえて文句をつけるならこの部分。しかしブギウギ、スウィングなどの軽快なリズムは完璧だ。録音の少ないこの曲がこれほどの演奏で聴けるのはうれしい。
ポンキエッリ作品もめずらしい方に属する(実際はいくつもバンド作品を書いているのに録音が少ないのだ)。オペラ作曲家らしい美しい旋律が楽しめるし、さいごが変奏曲になっているなど工夫もある。
指揮者エスポジトの曲は10分程度の小品で1996年に初演されたもの。名技性と音色の変化で聴かせるタイプ。ドラマチックな構成が面白く、ちょっとストラヴィンスキーみたいな部分がある。

 

Banda Musicale Aeronautica Militare
Patrizio Esposito, conductor

・Recorded in 1999
Dynamic Srl (Series 2000)
S 2036

Banda Musicale Aeronautica Militare

ポンキエッリ作品は
Ponchielli: Concert for Band

 
1. Ponchielli: Concerto for Trumpet and Band
2. Shaw: Concerto for Clarinet
3. Rimsky-Korsakov: Concerto for Trombone
  4. Esposito: Concertino for Trumpet
5. Persichetti: Symphony for Band, op.69
バンダ・シビカ

Rhapsody in Band
The Soncino Civic Band

これもイタリアのバンド。写真を見ると若者ばかりのようだ。さぞかし威勢のいい演奏が…と思ったら、指揮者ロカテッリはゆったりしたテンポを設定。おれたちはコンサート・バンドだぜっていうことなんだろうか。
曲は有名なもの、親しみやすいものが選ばれている。ホルストの組曲は民謡を素材にした『第2』だし、グランドマンの『アメリカ民謡ラプソディ』も同様。『赤い河の谷間』や『藁の中の七面鳥』も出てくる楽しい狂詩曲だ。ヨハン・デ・メイの『水族館』は作曲者の指揮した盤には及ばないもののなかなかの好演。『カンタベリー・コラール』は美しく重厚。テクスチャーが明確だとさらによかった。
わが小六禮次郎編曲の『イエロー・サブマリン』が秀逸。あの楽しい曲がヴァグナーの『ローエングリン』と合体し、パワフルに、壮大に盛り上がっていく。

 

Banda Civica di Soncino
Giancarlo Locatelli, conductor

・Recorded in 1995 & 96
Datum [debut]
DAT 80002

Rhapsody in Band

Dynamic Band

 
1. Holst: Suite No.2 in F major, Op.28 No.2
2. Brosse: Music for Celebration
3. De Meij: Aquarium, Op.5
4. Brosse: Seven Inch-framed
 

5. Grundman: American Folk Rhapsody No.3
6. Roost: Canterbury Choral
7. Cesarini: Convergentes
8. Lennon-McCartney: Yellow Submarine

騎士と城

Of Knights and Castles
Burning River Brass

囚われの美女を救う若き騎士。ヴィクトリア朝の画家ディクシーの油彩が示すように騎士道が主題。城や王権、戦いに関連する曲も含まれる。ルネサンス期のブル(11)、初期バロックのフレスコバルディ(12)からグレインジャー(3)、ウォルトン(15)まで、素材は広範囲から選ばれている。
モーツァルトの『夜の女王のアリア』、メンデルスゾーンの『戦争僧侶の行進曲』、イッポリートフ=イワーノフの『酋長の行列』など有名曲もあるが、ハイドンの『英国皇太子のための行進曲』は珍しい。エリック・コーツの『王女エリザベス』は現在の女王エリザベス二世のこと。第二次大戦中に書かれている。ディ・ロレンツォの作品は「アーサー王物語」がテーマだ。
バーニング・リヴァー・ブラスは11人の金管奏者と2人の打楽器奏者からなる小編成バンド。古い曲、古風な作品にはぴったりの規模だ。昔の宮廷の情景をほうふつさせる、雰囲気のあるアルバムになっている。

 

Burning River Brass

・Recorded in 1999
Dorian Recordings
xCD-90277

Of Knights and Castles

 

1. Premru: Of Knights and Castles
2. Coats: The Princess Elizabath
3. Grainger: The Duke of Marlborough Fanfare
4. Haydn: March for the Prince of Wales
5. Mozart: Queen of the Night's Aria
6. Premru: A Tale from Long Ago
7. Di Lorenzo: Of Kingdom and Glory
8. Rimsky-Korsakov: Farewell of the Tsar

  9. Ippolitov-Ivanov: Procession of the Sardar
10. Traditional: Agincourt Song
11. Bull: Corranto Battle
12. Frescobaldi: Capriccio sopra la Battaglia
13. Mendelssohn: March of the War Priests
14. Soler: The Emperor's Fanfare
15. Walton: Crown Imperial
 
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