クラシックレビュー
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イギリスの室内楽 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / [9]
early music / baroque / orchestral / concerto / instrumental
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.
 
ラトランド・ボウトン Rutland Boughton: String Quartets, Oboe Quartets
Sarah Francis/ The Rasumovsky Quartet

ラトランド・ボウトン(1878-1960)はオペラや大規模声楽曲で知られるが、室内楽の分野にも優れた作品を遺している。このアルバムの弦楽四重奏曲、オーボエ四重奏曲は、かれのポリシーを知る上でも興味深い作品たちだ。
ポリシーというのは「難解な曲は書かない」というもの。『弦楽四重奏曲 ヘ長調』は「ウェールズの丘より」という副題をもち、ウェールズを旅したときの印象を曲にしたもの。「谷からの眺め」とか「丘の上からの眺め」と記された楽章で構成されている。1923年の初演だが比較的はっきりした調性をもった明快な作品。
「ギリシア民謡による」と題された『弦楽四重奏曲 イ長調』も同様。ドイツ系の四重奏のイメージはなく、狂詩曲でも聴いているような自由な雰囲気が特徴だ。
娘がオーボエ奏者だったため、ボウトンはオーボエ作品をいくつか書いている。『オーボエ四重奏曲 第1番』は1932年作曲。うきうきする楽しさをもち、第3楽章は民謡風の主題による変奏曲になっている。表情ゆたかで短いわりに聴き応えがある。
『3つの無言歌』も娘のために書かれたもの。詩のイメージを曲にしたもので田園風の雰囲気が支配的。最終楽章の「舟歌」で聴かれるもの憂く揺れ動くしだれ柳のような旋律が印象的だ。

Sarah Francis, oboe
The Rasumovsky Quartet

・Recorded in 1996
Hyperion Records
CDA 66936

String Quartets, Oboe Quartets

The Immortal Hour
Bethlehem
Symphony No.3, Oboe Concerto
Music for Oboe

 
1. String Quartet in F major 'From the Welsh Hills'
2. Oboe Quartet No.1
  3. String Quartet in A major 'On Greek Folk Songs'
4. Three Songs without Words for Oboe Quartet
ハウエルズ

Howells & Delius: Strings Quartets
Britten Quartet

ハーバート・ハウェルズ(1892-1983)とフレデリック・ディーリアス(1862-1934)の弦楽四重奏曲集。英国の新しい団体ブリトゥン・クァルテットによる録音だ。ハウェルズは録音が少ないので貴重だが、共感に満ちた熱気のある演奏で満足度が高い。
『幻想的四重奏曲』はついヴォーン=ウィリアムズの『幻想的五重奏曲』を連想してしまう。RVWの作品が初演された3年後に完成しているから影響されたのだろう。抒情的な導入部から次第に情熱的に高揚していくさまが素晴らしい。
『弦楽四重奏曲“グロースターシャーにて”』は力作。故郷の田園を回想するといった趣で、民謡風の懐かしい旋律が脳裏をよぎっていくような感じ。祭りの喧噪や若き日の苦い思い出がセピア色によみがえってくるような…。
ディーリアスもまた田園風の趣。といっても第3楽章(フェンビーが弦楽合奏用に編曲して『去りゆくつばめ』と名づけた)以外はけっこうアブストラクトで、1916年という時代を反映していると言える。ブリトゥン・クァルテットのめりはりのきいた演奏のせいもあるのだが、優れた和声感覚、形式的自由さがはっきり聴きとれる。

 

Britten Quartet

・Recorded in 1995
EMI Classics
CDC 5 55349 2

Howells & Delius: Strings Quartets

Piano Quartets
Music for Violin & Piano
Clarinet Quintets

 
1. Howells: Fantasy String Quartet, Op.25
2. Howells: String Quartet 'In Gloucestershire'
  3. Delius: String Quartet
ヴォーン=ウィリアムズ

Vaughan Williams: Strings Quartets & Phantasy Quintet
The Medici Quartet/ Rowland-Jones

ヴォーン=ウィリアムズ(1872-1958)は室内楽の分野でも優れた作品を書いている。管弦楽曲や合唱曲ほどの人気はないようだが、いずれも英国近代音楽の代表選手にふさわしい作風であり完成度である。
『幻想的五重奏曲』は1914年の初演。かれの管弦楽用狂詩曲を思い出させる自由でファンタジックな展開。英国の田園を描いたかのようなパストラールな雰囲気をもつ。一般的な弦楽五重奏曲とはちがうユニークさが際立つ。
RVWは3か月間だがパリでラヴェルに学んでいたことがある。自分より若いラヴェルから、かれは印象主義の作曲法を学んだ。その直後に発表された『弦楽四重奏曲 第1番』(1909年初演)は全音階的進行、モードの活用などに成果が見られるとはいえ、やはり英国音楽である。
『弦楽四重奏曲 第2番』(1944年初演)は名作とされるもの。第2楽章の「ロマンス」でヴィオラが長い長いソロを聴かせるのがめずらしい。RVWはヴィオラに主要な役割を与えた曲がいくつもあり、渋くて温かい音色を巧みに活かしている。時期的に交響曲『第5番』『第6番』と重なるため、緊張感、モダンな和声など共通点もあれこれ聴きとれる。

 

The Medici String Quartet
Simon Rowland-Jones, viola*

・Recorded in 1989
Nimbus Records
NI 5191

Strings Quartets & Phantasy Quintet

Strings Quartets & Phantasy Quintet [Naxos]
Violin Sonata, etc.
Chamber Works for Clarinet

 
1. Phantasy Quintet*
2. String Quartet No.1 in G minor
  3. String Quartet No.2 in A minor 'for Jean on
  Her Birthday'
エルガー/ディーリアス

Elgar & Delius: Strings Quartets
Brodsky String Quartet

エドワード・エルガー(1857-1934)とフレデリック・ディーリアスの弦楽四重奏曲集。ディーリアスに関して言えば上記ブリトゥン・クァルテット盤よりこちらのブロドスキー盤のほうがディーリアスっぽく感じられるだろう。やさしくしなやかなアプローチでパストラールな印象が強く、癒される感じがする。
エルガーも同様のアプローチ。エルガーの特徴であるノビルメンテが見事に表現されており、そこからほのかな悲しみまで立ちのぼってくる。エルガーは管弦楽曲やオラトリオばかりが有名なようだが、小規模な作品にも魅力的なものがある。もう少し光が当たってもよさそうなものだ。

○写真は初出時のもの。現在のCDはデザインが異なる。

 

Brodsky String Quartet

・Recorded in 1984
Academy Sound and Vision
ASV CD DCA 526

Elgar & Delius: Strings Quartets

Elgar: Quartet & Quintet
Elgar: Quartet & Quintet [Naxos]

 
1. Elgar: String Quartet in E minor, Op.83   2. Delius: String Quartet (1916)
アーノルド・バックス

Arnold Bax: Chamber Music
The Nash Ensemble

アーノルド・バックス(1883-1953)の室内楽選集。5曲のうち3曲がハープをともなう。そのうち『哀歌風三重奏曲』(3)はドビュッシーの三重奏ソナタと同じフルート、ヴィオラ、ハープという編成。編成だけでなく響きもドビュッシー風で、バックスが印象派の手法を採り入れていたことがわかる。印象派の影響を受けた英国作曲家はヴォーン=ウィリアムズやディ−リアスばかりではなかったのだ。
グーセンスに触発されたという『オーボエ五重奏曲』のエキゾチックな旋律も魅力的。バックスはアイルランド(ケルト)に魅せられた作曲家であり、ファンタジックな作風はすぐケルト風の一言で片付けられてしまう傾向がある。この作品もアイルランドのエア、リールなどのエコーが聴きとれるが、そう単純なものではないだろう。フランスやドイツなどさまざまな作曲家の影響が血となり肉となっているのだ。
『クラリネット・ソナタ』はずいぶん自由に書かれている。クロマチックな展開を多用し、憂鬱なもの思い、異国情緒や常動曲的激しさが交錯する変化に富んだ作品。
バックスは交響曲や協奏曲で聴かせるダイナミックさも魅力的だが、かれの繊細さが味わえる室内楽も捨てがたい作品に満ちている。人なつこい旋律にはとぼしいけれども…。

 

The Nash Ensemble

・Recorded in 1995
Hyperion Records
CDA 66807

Arnold Bax: Chamber Music

Harp Quintet, Fantasy Sonata

 
1. Nonet for Flute, Oboe, Clarinet, String Quartet, Double Bass and Harp (1930)
2. Oboe Quintet (1922)
3. Elegiac Trio for Flute, Viola and Harp (1916)
4. Clarinet Sonata (1934)
5. Harp Quintet (1919)
バックス

Arnold Bax: Elegiac Trio, Fantasy Sonata, Sonata
Trio Turner

アーノルド・バックスのハープを含む室内楽を集めたもの。ターナーの絵があしらわれ、アンサンブル名もトリオ・ターナーだがフランス人たちによる演奏。フルート、ヴィオラ、ハープのための『エレジアック・トリオ』が上記ナッシュ・アンサンブル盤よりドビュッシーふうに聴こえる…という気がしないでもない。しかしかれらの演奏の特徴は表情のゆたかさにあり、較べるとナッシュ・アンサンブル盤が生真面目なものに感じられてしまう。
バックスの幻想的ロマンチシズムがケルトだけでなく後期ロマン派の影響の上に成り立っていることがわかる理想的なアプローチ。ヴィオラとハープの『幻想ソナタ』に聴かれる深い情感、抑制されたドラマの表出はことに聴きもの。ハープのパートも書法が格段に進歩しており、かなりの名手を想定していたと思われる。
『フルートとハープのためのソナタ』では旋法の選択とクロマチックな書法による幻想的でエキゾチックな世界が展開される。どこかなつかしい民謡的旋律があらわれる親しみやすい作品。初演のハーピストはロシアの名手マリア・コルチンスカだった。

 

<Trio Turner>
Isabelle Perrin, harp
Sabine Toutain, viola
Philippe Pierlot, flute

・Recorded in 1997
Arion ARN 68423

Bax: Elegiac Trio, etc.

Debussy, Ravel & Bax
Bax: Piano Sonatas

 
1. Elegiac Trio for Flute, Viola and Harp (1916)
2. Fantasy Sonata for Viola and Harp (1927)
3. Sonata for Flute and Harp (1928)
アラン・ロースソーン

Alan Rawsthorne: Concerto for 10 Instruments, etc.
The Fibonacci Sequence

アラン・ロースソーン(1905-71)はウォルトンと同世代の英国作曲家。作風の上でも近いものがあり、新古典主義に立脚した力強く明確な音楽が特徴だった。しかしかれは1940年代くらいからドライな響きが目立たなくなり、自由で、ロマンティックで、まろやかな方向へ向かうようになる。
『10の楽器のための協奏曲』(1961)には吹っ切れたような自由さが聴かれる。木管五重奏、弦楽四重奏とコンバスという10人で演奏され、なんとなく協奏曲ふう。固定した主役はないが名技性も楽しめ、リズムやハーモニーにも気分のおもむくままに書いたような面白味がある。
いちばん形式の明確なのが1936年に書かれた『フルート、オーボエとピアノのためのソナティナ』。思いきりのいい男性的作風で各奏者に超絶技巧を要求する小品。これがいちばんスカッとするかも。
フルート、ヴィオラとハープのための『組曲』(1968)も要注目。アーノルド・バックス(前項参照)に同じ編成の『哀歌風三重奏曲』(1916)があるけれど、ロースソーンの繊細さ、美しさも負けていない。作曲年代からすると古風な印象だが、この粋でちょっぴりドライな響きは快感。

 

The Fibonacci Sequence

・Recorded in 1998
Academy Sound & Visions
ASV CD DCA 1061

Concerto for 10 Instruments

Rawsthorne: String Quartets
Rawsthorne: Piano Concertos

 
1. Concerto for 10 Insturments (1961)
2. Sonatina for Flute, Oboe and Piano (1936)
3. Quintet for Clarinet, Horn, Violin, Cello and Piano (1970)
4. Suite for Flute, Viola and Harp (1968)
5. Quintet for Oboe, Clarinet, Horn, Bassoon and Piano (1962-3)
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