クラシックレビュー
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testament

1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / [8] / 9 / 10 early music / baroque / orchestral / concerto / chamber
instrumental / theatrical / vocal works / contemporary / etc.
 
ライナー:モーツァルト

Mozart: Eine kleine Nachtmusik, Divertimenti
Chicago Symphony Orchestra/ Reiner

フリッツ・ライナー(1888-1963)はミスター・メトロノームというニックネームを奉られていたそうである。もちろん悪口。インテンポでぐいぐい進んでいく快速の演奏は思い入れたっぷりにテンポを動かすロマンチックな演奏がお好きなムキにはお気に召さなかったのだ。しかしかれの指揮は大袈裟でないだけで、アゴーギクはちゃんと効いている。呼吸はむしろ見事なほどである。
モーツァルトのセレナード、ディベルティメントを集めたこのアルバムでも、ライナーの絶妙な呼吸を聞き取ることができる。『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』はいかにもライナーらしい勢いのある「アレグロ」で開始される。たぶん手持ちの『アイネ・クライネ』のなかでいちばん速い。しかし第2楽章「ロマンツェ」は微妙にテンポを動かしながら美しく歌い、第3楽章「メヌエット」はいかにもメヌエット。つまり舞曲としてのメヌエットなのだ。交響曲の場合でもそうなのだが、ライナーのメヌエットは常に舞曲であることを忘れていない。同じハンガリー出身で同じ時代を同じ国で生き、芸風も近いジョージ・セルは、そうではなかった。かれのメヌエットは最終楽章を準備するための緊張感をたたえていた。しかしライナーはここでリラックスするのである。どちらがいいというわけではない。違いがあるだけだ。
このアルバムの3曲は交響曲に較べたら気楽なもの。しかも舞曲の要素が強い「気晴らし」の音楽。ライナーは凛々しさとやさしさを巧みに織りまぜ、メリハリのあるモーツァルトを聴かせてくれる。オケの弦の音色が美しいのも魅力。

Chicago Symphony Orchestra
NBC Symphony Orchestra (3)
Fritz Reiner, conductor

・Recorded in 1954 & 55
Testament SBT 1379

Eine kleine Nachtmusik, Divertimenti

 
1. Serenade No.13 in G major, K.525 (1954.12.04)
2. Divertiment No.17 in D major, K.334 (1955.04.269
3. Divertiment No.11 in D major, K.251 (1954. 09.21-22)
ジャクリーヌ・デュプレ Elgar: Cello Concerto, Bach: Suites Nos.1 & 2
Jacqueline du Pre/ BBC Symphony/ Barbirolli

ジャクリーヌ・デュプレ1967年プラハ録音のエルガー。もちろんCD初出である。バルビローリはこのときBBC交響楽団とともにソ連、東欧を楽旅中。当時常任だったブレーズ、そしてジャッキー、ヘザー・ハーパーが同行していた。同日に録音されたマーラー『交響曲 第4番』はすでにCD化されている。
デュプレとバルビローリは英EMIにエルガーを録音しており、名盤と讃えられている。このプラハ録音はその方向をさらに推し進めたものだ。つまり感情を込めて音楽は大きくうねり、細部にこだわり、流れを止めてまでどっぷり歌っていく。チェリストと指揮者は見事な共犯者である。
信者ともいえる熱烈なファンがいるので、わたしは他のところでは当たり障りのないことしか書かない。あるいは美点しか言わない。すぐきつい反応が返ってくるから。そう、わたしはジャッキーの演奏が好きではない。乱暴で下品だと感じるから。ことにエルガーの場合、作品のもつ気高さ、思慮深さ、憂愁といった大切な要素が抜け落ちてしまっている。
バッハの『無伴奏』は1962年1月録音。17歳の誕生日前後の演奏だ。お嬢ちゃんの演奏だと思えば力強さ、推進力に驚嘆するものの、無心に聴いて楽しめるだけのレベルには達していない。

 

Jacqueline du Pre, cello
BBC Symphony Orchestra
John Barbirolli, conductor

・Recorded in 1962 - 67 (Live)
Testament SBT 1388

Elgar: Cello Concerto, etc.
エルガー:チェロ協奏曲他

 

1. Elgar: Cello Concerto in E minor, Op.85 (1967.01.03)
2. Bach: Cello Suite No.1 in G major, BWV1007 (1962.01.07)
3. Bach: Cello Suite No.2 in D minor, BWV1008 (1962.01.26)

ソロモン:シューマン、ブラームス Solomon Plays Schumann, Brahms & Liszt

ソロモン(Solomon Cutner 1902-88)はジャッキー同様に病気で引退を余儀なくされた。1956年、すでに54歳だったせいか、ジャッキーほどに伝説化することはなかったようだ。また端正で清潔な演奏スタイルだったせいか、ジャッキーほどに熱烈なファンもいなさそうである。
ソロモンはモーツァルトやベートーヴェンが素晴らしく、日本でも吉田秀和氏などが早くから高く評価していた。大仰な身振りのない清新なピアノ、美しく整ったタッチで軽々と音を転がしていく快適さ。流れからいえばギーゼキングに通じるような、ノイエ・ザッハリヒカイトなピアニスト。音楽のドラマは自然に生まれてくるものさとでも言いたげに、音楽はよどみなく流れていくのである。
そんなソロモンの弾くロマン派が、わたしはなかなか受け容れられなかった。軽すぎる、明るすぎると感じられたからだ。主情的ともいわれるロマン派作品が「音だけ」で放り出されたとき、全くちがった光を放っていることに気づかなかった。このアルバムでいえばいかにもシューマン、いかにもブラームスという思い入れを排して弾かれる作品が、個性的であることを止めて純粋な音の連なりとしてきこえてくる。もちろんだれの作品だか分からなくなるわけではなくて、ブラームスのひげ面から解放された音楽が聴けるということ。作曲者の生涯や時代背景とは関係なく、楽譜だけからきこえてくる音楽、といったらいいだろうか。

 

Solomon, piano

・Recorded in 1930 - 52
Testament SBT 1084

Solomon Plays Schumann, Brahms & Liszt

 
1. Schumann: Carnaval, Op.9 (1952.06.07&08)
2. Brahms: Piano Sonata No.3 in F minor, Op.5 (1952.08.19-20)
3. Liszt: La leggierezza from 3 etudes de concert (1930.07.17)
4. Liszt: Au bord d'une source from Annees de Pelerinage (1930.07.17)
5. Liszt: Hungarian Rhapsody No.15 in A minor 'Rakoczy' (1932.12.16)
ソロモン:ショパン Solomon: The Complete Recordings of Chopin

ソロモンが遺したショパン録音をすべて収めたというアルバム。17トラックしかないのがもの足りないが、いかにもソロモンらしいショパン、他に例を見ないショパンが聴かれる。前項でも書いたように、思い入れを排して音だけになってしまったショパン。これが気持がいいのである。録音年代は1932年から46年までさまざま。しかしすべてが青年の演奏のようにきこえる。深みがないからだろうって?いいや、眉間にしわを寄せていないだけなのさ。
力作といえるヘ短調の『幻想曲』や『バラッド』を聴くと、淡々とした軽いタッチの中から翳りや悩みや情熱といったものがふつふつと湧き上がってくるのを感じる。わざとらしさ、いやらしさはまったくない。30歳のピアニストがこういうことをさらっとやってのけるのである。
ほかの小品たちはみな端正に美しく輝いている。ソロモンにとってショパンがロマン派かどうかなんてどうでもよかったんじゃないだろうか。

 

Solomon, piano

・Recorded in 1932 - 46
Testament SBT 1030

The Complete Recordings of Chopin

 
1. Etude No.3 in E major, Op.10-3 (1945.07.03)
2. Etude No.8 in F major, Op.10-8 (1934.12.29)
3. Etude No.9 in F minor, Op.10-9 (1942.09.16)
4. Etude No.1 in A-flat major, Op.25-1 (1932.12.14)
5. Etude No.2 in F minor, Op.25-2 (1942.09.16)
6. Etude No.3 in F major, Op.25-3 (1942.09.16)
7. Etude No.3 in F major, Op.25-3 (1934.12.29)
8. Nocturne in E-flat major, Op.9-2 (1942.09.04)
9. Nocturne in D-flat major, Op.27-2 (1942.08.21)
10. Valse in A-flat major, Op.42 (1945.06.20)
11. Valse in E minor, Op.posth. (1946.04.02)
12. Polonaise in A major, Op.40-1 (1932.11.30)
13. Polonaise in A-flat major, Op.53 (1932.12.14)
14. Fantaisie in F minor, Op.49 (1932.12.02)
15. Mazurka in A minor, Op.68-2 (1946.04.02)
16. Ballade No.4 in F minor, Op.52 (1946.04.01)
17. Berceuse, Op.57 (1942.09.04)
ソロモン:ブラームス Brahms: Piano Concerto No.1, Handel Variations
Philharmonia Orchestra/ Kubelik

ラファエル・クーベリック、フィルハーモニア管と組んだブラームス『ピアノ協奏曲第1番』はソロモン50歳時の録音。ブラームスのピアノ協奏曲はどちらもオーケストラの比重が大きく、ピアノ付き交響曲だと言う人もあるほど。じっさい線の細いピアニストだと管弦楽に埋もれてしまい、存在感がなくなってしまう。これをタッチの軽いソロモンが演奏したらどうなってしまうのだろう。
というのは杞憂に終わった。かれのタッチは充分に強靱なのだ。例によって端正さはあるものの、彫りの深い音楽になっている。クーベリックのアプローチはソロモンに較べたらロマンチックな気がする。やさしく歌いながらピアノを包み込み、うまさを見せつける。むやみに壮大な音楽にならないのはピアニストの特性を活かそうとしたからだろうか。この曲に重さ、渋さを求めるとはぐらかされたように感じるが、こういう清々しいブラームスも捨てがたい。
『ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ』は残念なことに音が揺れてしまう。テープが劣化してしまったのだろう。

 

Solomon, piano
Philharmonia Orchestra
Rafael Kubelik, conductor

・Recorded in 1942 & 52
Testament SBT 1041

Brahms: Piano Concerto No.1

Brahms: Cello Sonata No.1, etc.

 
1. Piano Concerto No.1 in D minor, Op.15 (1952.09.03-05)
2. 25 Variations & Fugue on a Theme by Handel, Op.24 (1942.07.23-24 & 08.05)
ソロモン:ブラームス Brahms: Piano Concerto No.2, Rhapsody, etc.
Philharmonia Orchestra/ Dobrowen

『ピアノ協奏曲第2番』はドブローウェンとの顔合わせ。ブラームスにしても珍しいくらいのがっちりした4楽章構成の協奏曲。長くて変化に富み、ピアニストは長旅にへとへとになるという難曲でもある。また巨匠大家の名演が目白押しの曲でもある。
そんな中でソロモン盤が存在感を示すのは『第1番』同様、清々しさと端正さゆえ。曲中もっとも美しいとされる第3楽章の独奏チェロとのからみ、あの部分でソロモンの澄んだ響きと粒の揃ったタッチが冴えわたる。オケと一体化して走らされるアレグロでは軽やかな足どりが活かされる。埋もれることもなく浮き立つこともなく、どこまでもなめらかに流れていく。ドブローウェンはときに煽り気味になりながら長大な作品をぐいっと一括りにまとめていく。

 

Solomon, piano
Philharmonia Orchestra
Issay Dobrowen, conductor

・Recorded in 1944 - 52
Testament SBT 1042

Brahms: Piano Concerto No.2

 
1. Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op.83 (1947.04.29-30 & 05.01)
2. Rhapsody in G minor, Op.79-2 (1944.04.20)
3. Intermezzo in B-flat minor, Op.117-2 (1944.04.20)
4. Intermezzo in C major, Op.119-3 (1952.08.21)
ソロモン:皇帝 Beethoven: Piano Concerto No.5, Mozart: Sonatas
Philharmonia Orchestra/ Menges

『ピアノ協奏曲第5番《皇帝》』は以前EMIから出た協奏曲集に収録されなかったもの。1955年5月にアビーロード・スタジオで録音されている。ソロモンらしいほどほどのスケールの、端正で美しいベートーヴェンである。きらきらと珠のように連なる美音、無心に弾いているようなさりげない表情が魅力。メンゲスもソロモンの特徴をよく理解し、アゴーギクを抑えて軽快に流していく。
モーツァルトは若干速めのテンポをとり、弾むように音を転がしてみせる。ほとんどインテンポだがメリハリは充分効いており、鍵盤の重い現代ピアノとは思えない軽さ、走り具合にも驚かされる。『ニ長調』は『トルコ行進曲つき』より恰幅のある演奏を目指したと思われ、ちょっと生真面目な印象。

 

Solomon, piano
Philharmonia Orchestra
Herbert Menges, condoctor

・Recorded in 1952 &55
Testament SBT 1221

Beethoven: Piano Concerto No.5, Mozart: Sonatas

Beethoven: Concertos Nos.1&2
Beethoven: Concertos Nos.3&4
Beethoven & Bliss: Concertos

 
1. Beethoven: Piano Concerto No.5 in E-flat major, Op.73 'Emperor' (1955.05.13-14)
2. Mozart: Piano Sonata No.11 in A major, K.331 (1952.12.02)
3. Mozart: Piano Sonata No.17 in D major, K.576 (1952.06.09)
ソロモン:シューベルト Schubert & Beethoven: Piano Sonatas

ソロモンのシューベルトはユニークである。まるで古典派みたいなのだ。リヒテルやブレンデル、内田などの一音一音に意味を込めた、よく言えば思索的なシューベルトの対極にある。まるでモーツァルトみたいに音はけれん味なく流れていく。シューベルト独自の旋律美、精妙な和声は、損なわれないどころか、むしろ際立ってきこえてくる。この2曲は曲の性格もあり、可憐さも際立ってくる。初出の『イ長調』(これのみステレオ録音)ではとくにそれが顕著である。後期のソナタも聴いてみたいが、録音はこれしかなさそうだ。
ベートーヴェンの最後のソナタは既出の全集録音とは別のもの。若干テンポが違うくらいでほとんど差はない。

 

Solomon, piano

・Recorded in 1948 - 56
Testament SBT 1230

Schubert & Beethoven: Piano Sonatas

 
1. Schubert: Piano Sonata No.13 in A major, D.664 (1956.08.28)
2. Schubert: Piano Sonata No.14 in A minor, D.784 (1952.12.03)
3. Beethoven: Piano Sonata No.32 in C minor, Op.111 (1948.06.21)
 
ヒストリカル 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / [8] / 9 / 10
early music / baroque / orchestral / concerto / chamber
instrumental / theatrical / vocal works / contemporary / etc.