クラシックレビュー
協奏曲   アドマックス「カフェ・マキシマム」  
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協奏曲レビュー 1 / 2 / 3 / 4 / [5]
early music / baroque / orchestral / chamber / instrumental
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.
 

ヴァンハル

Vanhal: Concerto for 2 Bassoons, 2 Sinfonias
The Umea Sinfonietta/ Saraste

ヤン・クジティテル・ヴァニュハル(ヴァンハルとも表記 1739-1813)は古典派時代に活躍したボヘミア出身作曲家の中でも大物の部類。モーツァルトと親しかったことでも知られる。作風も比較的近いものがあり、シュトルム・ウント・ドランクを地でいく短調交響曲は大変魅力的だ。
協奏曲も優れたものが多いらしいがまだ録音が少ない。これまでにコントラバスやバスーンという低音楽器を主役にした協奏曲録音がリリースされており、いずれもたしかな才能を感じさせる。このアルバムは2本のバスーンのための協奏曲という、ジャンル的にも貴重な作品を紹介したもの。
13分近い第1楽章は聴き応えのある展開部をもち、ひらめきに満ちている。第2楽章「アンダンテ・グラツィオーソ」もソナタ形式で書かれ、バスーン2本の美しいカンティレーナが聴かれる。曲は快活なアレグロで締めくくられる。
二つの交響曲は比較的小規模なものが選ばれている。どちらもいいが、イ短調作品のひたむきに走るさまが素晴らしい。

ウメオ・シンフォニエッタは1979年に結成されたスウェーデンの団体。サラステの指揮のもとフレッシュな演奏を聴かせてくれる。

Annika Wallin & Arne Nilsson, bassoons
The Umea Sinfonietta
Jukka-Pekka Saraste, conductor

・Recorded in 1984
BIS CD-288

Concerto for 2 Bassoons, 2 Sinfonias

Bassoon Concertos
Vanhal: Wind Concertos
Vanhal: Double Bass Concertos
Double Bass Concerti

 
1. Concerto in F major for 2 Bassoons & Orchestra
2. Symphony in F major
3. Symphony in A minor
クルーセル Crusell: Clarinet Concertos
King/ London Symphony/ Francis

クルーセル(1775-1838)はシベリウス以前のフィンランドで唯一名を知られた作曲家。クラリネットの名手だったためクラリネットを含む作品を多く遺している。なかでも演奏頻度の高いのがクラリネット協奏曲3曲だ。
古典的たたずまいの中に名手ならではの名技が織り込まれた名品ばかり。急速楽章のリズミカルな楽しさは無類。楽想の展開が巧みなので表情の多彩な変化についつい引きずり込まれていく。緩徐楽章では一転して悩ましいほどの美しい歌が聴かれる。自由にたゆたう旋律はロマン派の作曲家が書きそうな感じだ。
英国のベテラン、シア・キングは玄人好みのクラリネット奏者。この人の演奏に凄味を感じたことはないが、安定感は超一流。最低音から最高音まで無理なく響かせ、なにより独特の温かさをもっているのが魅力だ。

 

Thea King, clarinet
London Symphony Orchestra
Alun Francis, conductor

・Recorded in 1981 & 82
Hyperion Records
CDH55203

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Crusell: Clarinet Concertos

Clarinet Concertos [Naxos]
Pleyel: Clarinet Concertos

 

1. Concerto No.1 in E-flat major, Op.1
2. Concerto No.2 in F minor, Op.5

  3. Concerto No.3 in B-flat major, Op.11
スタンフォード/フィンジ Stanford & Finzi: Clarinet Concertos
King/ Philharmonia/ Francis

スタンフォード(1852-1924)はエルガーやパリーと並んで英国近代音楽隆盛の基礎を作った人物。この三人に共通するのはドイツ・ロマン派への傾倒で、ことにブラームスはかれらのアイドル的存在だった。
『クラリネット協奏曲 イ短調』もドイツ・ロマン派の書法を継承したもの。ホルンの使い方にブルックナーを連想させるところもあるが、ダブリン生まれということが影響しているのか、メロディに独自性があらわれている。クラリネットに高度なテクニックを要求し、起伏の大きいドラマチックな展開を聴かせる手応え充分の作品だ。
フィンジ(1901-56)の『クラリネットと弦楽のための協奏曲』は通常の協奏曲にある華やかさは感じられない。オーケストラも弦のみで渋い。落ち着いた筆致の私小説を読んでいるような気がする。情熱の高まりや深い哀しみが抑制され、昇華された姿で歌われていく。それにしても田園風第二楽章で聴かれるもの憂さよ!
この曲は英国の名クラリネット奏者フレデリック・サーストンに献呈されたもの。かれの未亡人シア・キングが独奏を担当したこのアルバムはそれだけでも興味深いが、かの女の特徴である安定感と温かみが存分に発揮された名演奏。聴くほどに味わいの深まる一枚。

 

Thea King, clarinet
Philharmonia Orchestra
Alun Francis, conductor

・Recorded in 1979
Hyperion Records
CDA66001

Stanford & Finzi: Clarinet Concertos

English Music for Clarinet

 
1. Stanford: Clarinet Concerto in A minor, Op.80
2. Finzi: Concerto for Clarinet and String Orchestra, Op.31
管楽器のアルバムはこちらも→BRASS & WINDS
ジョージ・ダイソン George Dyson: Concerto Leggiero, etc.
Parkin/ City of London Sinfonia/ Hickox

ジョージ・ダイソン(1883-1964)の協奏曲集。『コンチェルト・レッジェーロ』(軽快な協奏曲)はピアノと弦楽オケで演奏される。『コンチェルト・ダ・カメラ』(室内協奏曲)と『コンチェルト・ダ・キエーサ』(教会協奏曲)はともに独立した弦楽四重奏がコンチェルティーノとして扱われるコンチェルト・グロッソの形態。時期的にもヴォーン=ウィリアムズの『コンチェルト・グロッソ』(1949-50)と同じ時期に書かれたもので、書法ばかりでなく曲の雰囲気も近い。
第二次大戦後ということを考えればいかにも保守的。『コンチェルト・レッジェーロ』はモーツァルトふうの平明さが追求され、透明感のある響きが聴かれる。そうはいってもシンプルな長調/短調で書かれているわけではなく、モダンな響きが支配的だ。節回しもリズムも英国的と言えるだろう。土台はヴォーン=ウィリアムズあたりにある。ハーモニーを分厚くしない書法が軽さとさわやかさを産み出し、大陸系協奏曲との違いを際立たせる。管楽器不在のオケとはいえ、もっと色彩的に作れたはず。ダイソンはわざとやらなかったのだろう。モノトーンの弦楽とピアノとの対比に面白さを見いだしたのだと思われる。
二つのコンチェルト・グロッソはさらに英国音楽らしさを感じさせるもの。エルガーやパリーの世代と違ってブラームスの影響からは脱却しており、これぞ英国伝統の音楽といった感じ。弦楽ばかりとはいえパートが細かく分けられ、けっこう複雑に書かれている。覇気のある急速楽章とドライな叙情を歌う緩徐楽章との落差が鮮やか。均質な響きへの嗜好が産み出した近代英国ならではの佳品。

Eric Parkin, piano
City of London Sinfonia
Richard Hickox, conductor

・Recorded in 1991 & 92
Chandos Records
CHAN 9076

Dyson: Concerto Leggiero, etc.

Dyson: Symphony in G, etc.
Dyson: Canterbury Pilgrims
Dyson: Quo Vadis

 
1. Concerto Leggiero for Piano and String Orchestra
2. Concerto da Camare for Strings Orchestra
3. Concerto da Chiesa for String Orchestra
リラ・アンジェリカ William Alwyn: Lyra Angelica, etc.
Masters/ City of London Sinfonia/ Hickox

ウィリアム・オルウィン(1905-85)のハープ協奏曲『リラ・アンジェリカ』は、長野オリンピックでフィギュアのミシェル・クワンが採り上げて少しばかり有名になった。ハープと弦楽オーケストラで演奏される4楽章の協奏曲。17世紀の英国詩人の作品に触発されたという美しく幻想的で、はかなさと哀しみを湛えた音楽。30分ほどかかるが、力強く盛り上がる部分はほとんどない。オルウィンの特徴である親しみやすさ、平明さが活かされ、ハープをともなうもの静かな交響曲という感じもある。1954年のプロムス(オープニング・ナイト)で初演された。
ほかの3曲も独奏と弦楽のために書かれている。コーラングレを主役にした『秋の伝説』は晩秋のわびしさが身にしみるよう。解説によるとこの曲はラファエル前派の画家・詩人ダンテ・ガブリエル・ロセッティに捧げたのだそうだ。オルウィンは作曲のかたわら絵も描いており、左の絵はかれ自身の作品。自分の絵はラファエル前派とまったくちがうのが面白い。
ヴィオラによる『田園風幻想曲』は渋くてわたし好み。暗いのは戦争の時代に書かれたからだろうか。『悲劇的間奏曲』も背後にヒトラーの足音がありそうだ。

 

Rachel Masters, harp
Nicholas Daniel, cor anglais
Stephen Tees, viola
City of London Sinfonia
Richard Hickox, conductor

・Recorded in 1991
Chandos Records
CHAN 9065

Alwyn : Lyra Angelica, etc.

Alwyn : Lyra Angelica [Naxos]
Alwyn : Oboe Concerto, etc.
Alwyn : Symphony No.1, etc.

 
1. Autumn Legend for Cor Anglais and String Orchestra (1954)
2. Pastoral Fantasia for Viola and String Orchestra (1939)
3. Tragic Interlude for 2 Horns, Timpani and String Orchestra (1936)
4. Concerto for Harp and String Orchestra "Lyra Angelica" (1954)
マルトゥッチ Giuseppe Martucci: Piano Concerto, etc.
Freni/ Bruno/ Orchestra Filarmonica della Scala/ Muti

ジュゼッペ・マルトゥッチ(1856-1909)はイタリア人作曲家にしては例外的にオペラを書かなかった人物。作品は純粋器楽が多く、アルプスの北の後期ロマン派に傾倒していた。指揮者としても活動し、ワグナーの『トリスタンとイゾルデ』イタリア初演を手がけた。作曲家としては交響曲、ピアノ協奏曲を二つずつ、多数の室内楽(ピアノを含むものが多い)、ピアノ独奏曲、連作歌曲などを遺しているが、現在はほとんどが埋もれてしまっている。
カルロ・ブルーノによる『ピアノ協奏曲 変ロ短調』を聴くと、ブラームスの協奏曲に影響された構築性とロマンの発露が感じられる…というより、実によく似ているんである。ブラームスには南国(アルプスの南)への憧れがあったといわれるが、この作品にはマルトゥッチの北国(アルプスの北)への憧れが感じられる。かれは優れたピアニストでもあったそうで、ピアノパートの華やかな名技も聴き応えがある。
歌曲集『追憶の歌』はピアノ伴奏版をマルトゥッチみずからオーケストレーションしたもの。この版での初演は1900年。7曲からなる連作歌曲で、ワグナーふうのライトモティーフで全曲が統一されている。ときおりマーラーを思わす頽廃が顔を出す、後期ロマン派の典型を聴くようなそれはそれは美しい歌曲集だ。

 

Mirella Freni, soprano (1)
Carlo Bruno, piano (2)
Orchestra Filarmonica della Scala
Riccardo Muti, conductor

・Recorded in 1995
Sony Classical SK 64 582

La canzone dei ricordi, Piano Concerto

ダヴァロス盤
La canzone dei ricordi, Piano Concerto

Martucci: Symphonie No.1, etc.

Martucci: Symphonie No.2, etc.
Martucci: The Piano Music

 
1. La canzone dei ricordi (Songs of Memories)
2. Concerto for Piano and Orchestra in B-flat minor, Op.66
冬の伝説 Arnold Bax: Winter Legends, Saga Fragment
Fingerhut/ London Philharmonic/ Thomson

これを協奏曲の分類に入れていいのかとも思ったが、ピアノと管弦楽のために書かれているので適当な場所が見あたらない。アーノルド・バックスの『冬の伝説』はピアノ入り交響曲のようでもあり、組曲のようでもあるからだ。分類などどうでもいいようなものだが、こういうとき困る。
さて、曲はピアノと管弦楽の対決といった図式では書かれていない。また木枯らしや流氷といった冬の情景を写しとってもいない。シベリウスやニールセンを思わせる力強く巧みな管弦楽法で「冬のイメージ」を描いているのだ。ジャケット写真から想像されるような厳しい冬。バックス作品によくいわれる「ケルトふう」は感じられず、北国の冬が抽象化され、昇華されていく。これは親しみやすさがないということでもあり、耳になじむやさしい旋律はほとんど出てこないのである。15分に及ぶ第二部(レント楽章)も幻想味と緊張感をたたえ、凍てつく大地と弱い日の光を感じさせる。
協奏曲ではないもののピアニストにはかなりの力量が要求される。力強い打鍵とクリアなソノリティの持ち主でないとオーケストラに埋もれてしまう。華やかな独奏部分が少なくて気の毒な気もするが、バックスはこの曲を愛人のハリエット・コーエンに献呈したのだった。初演は1932年2月10日、クイーンズ・ホールにおいてボールト指揮のBBC交響楽団とハリエットのピアノで行われた。

オマケの『伝説―断章』は旧作の『ピアノ四重奏曲』をオーケストレーションしたもの。この迫力ある小品もハリエットのために書かれたそうである。

1. Winter Legends for Piano and Orchestra (1930)
2. Saga Fragment for Piano and Small Orchestra (1933)

 

Margaret Fingerhut, piano
London Philharmonic Orchestra
Bryden Thomson, conductor

・Recorded in 1986
Chandos Records CHAN 8484

Bax: Winter Legends

 
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