クラシックレビュー
現代音楽レビュー   アドマックス「カフェ・マキシマム」  
ジャズのページ ブルースのページ ワールドミュージックのページ 吹奏楽のページ ブックレビュー クラシックのページ
現代音楽あれこれ 1 / [2] / 3 / 4
early music / baroque / orchestral / concerto / chamber
instrumental / theatrical / vocal works / historical recordings / etc.
 

ラウタヴァーラ

Rautavaara: Complete Works for String Orchestra vol.1
Ostrobothnian Chamber Orchestra/ Juha Kangas

今や人気絶頂の感のあるエイノユハニ・ラウタヴァーラ。この弦楽オケのための作品全集はかれの50年に及ぶ作曲活動を振り返ることのできる好企画盤。
作品番号1の組曲『ヴァイオリン弾きたち』はピアノ版がある。舘野泉の演奏で聴いたことのある人も多いだろう。弦楽合奏版もなかなか魅力的で楽しめた。同じ年に書かれた『弦楽のための組曲』は新古典主義の作品。『ディベルティメント』も同様。英国近代音楽の伝統にバルトークの影響が反映されたような響き。フィンランドの先輩シベリウスにも弦楽のための作品があるが、類似はあまり感じられない。
ハンガリーの作曲家たちに捧げられた曲が3つ。かれらの作風を意識しているらしいがどうもようわからん。『リストへのオマージュ』はリストが調性の崩壊の先駆者だったことを示そうとしたように思われる。うねるようなストリングスはスリルがあり、熱のこもった素晴らしい盛り上がりをみせる。『バルトークへの墓碑銘』は前奏曲とフーガである。頭文字B-E-B-Aを用い、力強く緊張感のある音楽に仕上げている。
最後の『コダーイへのオマージュ』も音の遊びが入っている。これはたいへん聴き応えのある作品でアルバム最後を飾るにふさわしい。民族的リズムが採り入れられた分かりやすい部分と調性のない複雑なテクスチャーが押し寄せる部分がある。ゲンダイオンガクが不得手な人にはきついかも知れない。

Ostrobothnian Chamber Orchestra
Juha Kangas, conductor

・Released in 1993
Ondine Inc.
ODE 821-2

Complete Works for Strings vol.1

第2集とまとめて聴きたい人は
Complete Works for Strings

 

1. Pelimannit - Fiddlers, op.1 (1952)
2. Divertimento (1953)
3. Suite for Strings (1952)

  4. Hommage a Liszt Ferenc(1989)
5. An Epitaph for Bela Bartok (1955/86)
6. Hommage a Kodaly Zoltan (1982)
ラウタヴァーラ

Rautavaara: Complete Works for String Orchestra vol.2
Ostrobothnian Chamber Orchestra/ Juha Kangas

ラウタヴァーラ初期の作品、1960年と61年の『カント(歌)第1番・第2番』は12音技法による。テンションの高い小品で、わが武満の『弦楽のためのレクイエム』を思い出した。1972年の『第3番』では12音技法が放棄され、つづく『第4番』でこだわりのない現在の作風に到達。たゆたうストリングス。形式感なし。あたたかさ、やわらかさのある美しい曲だ。最近のラウタヴァーラが好きな人はここではじめてほっとするんじゃないかな。
『ハープと弦楽のためのバラッド』が面白い。いかにもハープ、というフレーズが出てこない。ぼそぼそとつぶやくようなハープと暗い面持ちの弦楽が静かに対話を続ける作品。バラッドというのは物語詩だが、どうも深刻な物語がありそうだ。聴いているほうも気分が沈潜していく。
オストロボスニア弦楽合奏団は1989年にプロに転向したばかりの団体。けっこううまいが音色が少し固い。これだけレベルの高い演奏ができたのは指揮者ユハ・カンガスの巧みな棒さばきのおかげかも知れない。

 

Ostrobothnian Chamber Orchestra
Juha Kangas, conductor
Reija Bister, harp (5)

・Released in 1993
Ondine Inc.
ODE 836-2

Complete Works for Strings vol.2

第1集とまとめて聴きたい人は
Complete Works for Strings

 

1. Canto I (1960)
2. Canto II (1961)
3. Canto III (1972)
4. Canto IV (1992)

  5. Ballad for Harp and Strings (1973/80)
6. A Finnish Myth (1977)
7. Ostrobothnian Polska (1980/93)
ラウタヴァーラ:交響曲

Rautavaara: Symphonies Nos. 1, 2 & 3
Leipzig Radio Symphony Orchestra/ Max Pommer

ラウタヴァーラはヘルシンキのシベリウス・アカデミーでアーレ・メリカントに学んだのち、米国にわたってコープランドやセッションズに作曲を学んだ。『交響曲 第1番』はその米国時代に書かれたもの。もとは4楽章形式だったが、改訂にあたってラウタヴァーラは第4楽章を破棄。第2楽章をフィナーレとし、第3楽章を前に持ってきて第1楽章と合体させた。楽章数が半分になったわけだ。ゆったりした第1楽章のベースにあるのはシベリウスゆずりの抒情。そこにヒンデミットふうの斬新なハーモニーによる緊張感が加わる。第2楽章アレグロではソ連(当時)のプロコフィエフやショスタコーヴィチの影響が聴かれる。どこか皮肉な響き。米国っぽさは感じられない。
『第2番』と『第3番』は4楽章形式で、叙情的導入部をもつ点も共通する。12音技法も用いられるが調性が明確な部分が多い。わかりやすい音楽である。『第3番』第2楽章のブルックナーを連想させるオルガンのような響きが魅力的(ヴァグナー・チューバを使用)。自然への賛美が感じられ、のちの作風を予見させる。

 

Leipzig Radio Symphony Orchestra
Max Pommer, conductor

・Recorded in 1989
Ondine Inc.
ODE 740-2

Symphonies Nos. 1, 2 & 3

ラウタヴァーラの廉価盤
Cantus Arcticus
交響曲 第3番他

 
1. Symphony No. 1 (1956/88)
2. Symphony No. 2 (1957/84)
  3. Symphony No. 3 (1961)
ラウタヴァーラ:交響曲

Rautavaara: Symphonies Nos. 4 & 5, Cantus Arcticus
Leipzig Radio Symphony Orchestra/ Max Pommer

「鳥たちと管弦楽のための協奏曲」の副題をもつ『カントゥス・アルクティクス(北極の歌)』はラウタヴァーラのもっとも人気のある作品のひとつ。北極圏で録音された鳥の鳴き声とオーケストラが共演するというもので、音楽というより情景を聴いている感じ。これがひと頃のヒーリング・ブームにのって(一部で)もてはやされたのだった。わたしの場合癒しより憂愁を感じてしまうのだが…。
『交響曲 第4番』はそれまでの交響曲に比べてアヴァンギャルド。打楽器が多用され、同時代のリゲティやシュトックハウゼンの作風が採り入れられている。エネルギッシュで面白いが、さほど個性的とはいえない。
30分を超える単一楽章の『交響曲 第5番』は傑作といっていいだろう。得意の叙情的表現が洗練度を増し、『第4番』で試みたアヴァンギャルドな技法が無理なくそれに溶け込んでいる。シンプルなラインと細分されたパートの細やかな動き。それらの重なりから響きの豊かさが産まれる。自省的ともいえる深い音楽。聴けば聴くほど魅力が増してくる…。

 

Leipzig Radio Symphony Orchestra
Max Pommer, conductor

・Recorded in 1989 & 90
Ondine Inc.
ODE 747-2

Symphonies Nos. 4 & 5, Cantus Arcticus

ラウタヴァーラのベスト盤
カントゥス・アルクティクス

 
1. Cantus Arcticus (1972)
2. Symphony No. 4 "Arabescata" (1962)
  3. Symphony No. 5 (1985)
ラウタヴァーラ

Rautavaara: Symphony No.6 & Cello Concerto
Ylonen/ Helsinki Philharmonic Orchestra/ Pommer

ラウタヴァーラの『交響曲 第6番』は「ヴィンセンティアーナ」の副題をもち、自作のオペラ『ヴィンセント』の音楽をベースにしている。4つの楽章は「星明かりの夜」「カラス」「サンレミ」「賛美」と名づけられ、ゴッホの作品と生涯をたどるような内容。オペラからの寄せ集めなのだが散漫な印象はない。『交響曲 第5番』に通じる完成度の高さをもち、色彩的な魅力が加わっている。
『チェロ協奏曲』は1968年の作曲。古典的形式にのっとりつつ1960年代の西欧現代音楽の成果を盛り込んだもの。劇的な展開を見せる第一楽章。抒情的な表現に満ちた第二楽章。技巧的なカデンツァが聴かれる第三楽章。17分が短く感じられる充実感のある作品だ。

 

Marko Ylonen, cello
Helsinki Philharmonic Orchestra
Max Pommer, conductor

・Recorded in 1993
Ondine Inc.
ODE 819-2

Symphony No.6 & Cello Concerto

Vincent

 
1. Symphony No.6 "Vincentiana" (1992)
2. Cello Concerto (1968)
光の天使

Rautavaara: Symphony No.7 "Angel of Light"
Helsinki Philharmonic Orchestra/ Segerstam

1994年に書かれた『交響曲 第7番“光の天使”』。ラウタヴァーラのブレイクはこの辺りから始まった。天使シリーズの一つで、それまでのいかにも現代音楽といった刺激的な響きは抑えられ、静けさが支配する叙情的な作品になっている。高揚する部分でも緊張感はほどほどで、なによりわかりやすいのが特徴だ。ペルトやグレツキよりも親しみやすいくらいに。
もう一つの『受胎告知』は協奏曲だ。大編成の吹奏楽と金管五重奏、オルガンのために書かれている。複雑な構造をもつが難解な印象はなく、大自然のドラマが展開していくさまを見ているような気がする。どこが受胎告知なのかはさっぱりわからない(笑)。鳥のさえずりやら雷鳴やらを聴いてしまうのはわたしだけか。

 

Helsinki Philharmonic Orchestra
Leif Segerstam, conductor
Kari Jussila, organ

・Recorded in 1995
Ondine Inc.
ODE 869-2

Symphony No.7 "Angel of Light"

Angel of Light [Naxos]
Angel of Light & Cantus Arcticus

 
1. Symphony No.7 "Angel of Light" (1994)
2. Annunciations - Concerto for Organ, Brass Group and Symphonic Wind Orchestra (1977)
einojuhani rautavaara

Rautavaara: Symphony No.8 "The Journey"
Nordmann/ Helsinki Philharmonic Orchestra/ Segerstam

有名になるといいことがあるものだ。マリエル・ノルマンやレイフ・ゼーゲルスタムという世界的な大物たちが自分の作品を演奏してくれるのだから。しかも作曲されてすぐCDがリリースされるのである。2001年の当アルバムは『ハープ協奏曲』と『交響曲 第8番“旅”』のカップリング。
ラウタヴァーラはかつて『ハープと弦楽のためのバラッド』を書いていた。あの時の内省的なつぶやきからすると『ハープ協奏曲』は言葉がはっきりしており、ハープはハープらしい奏法できらめく音の粒を振りまいていく。各楽章は「重々しく/アダージェット/厳粛に」と記されているが暗さ、堅苦しさはなく、全体がゆったりとした音の流れに充たされている。最終楽章でソロハープとオーケストラのハープとの絡みが聴かれるのが面白い。
『交響曲 第8番』は前作からの流れに沿ったもの。ただ副題の『旅』というのはラウタヴァーラ自身の音楽人生を指すものと思われ、若い頃に試みたあれこれの手法が顔を出す。自叙伝のつもりで書いたのではないだろうか。第二楽章がフェローチェ(獰猛に)と記されたエネルギッシュな曲になっているのは30年ほど前の作風の回顧。(あるいは無茶をやった青春時代の回顧?)抒情的なトランクィルロを経て最終楽章はコン・グランデッツァ。盛大さをもって、とでもいったところか。充足感と意欲が感じられるのは作曲者の現在の心情をあらわすのだろう。かれは今、幸福感に満ちて活き活きしているのである。

 

Marielle Nordmann, harp
Helsinki Philharmonic Orchestra
Leif Segerstam, conductor

・Recorded in 2001
Ondine Inc.
ODE 978-2

Symphony No.8 & Harp Concerto

Symphony No.8 & Violin Concerto
Piano Concerto No.3

 
1. Concerto for Harp and Orchestra (2000)
2. Symphony No.8 "The Journey" (1999)
ラウタヴァーラ

Rautavaara: Book of Visions, etc.
National Orchestra of Belgium/ Franck

ラウタヴァーラ2003年の管弦楽作品『幻想の書』を収録。「夜の物語」「火の物語」「愛の物語」「運命の物語」の4楽章からなる交響曲ふうの構成。なぜこれを交響曲と名づけなかったのか、わたしはマーラーみたいに縁起をかついだのではないかと思っているが、どうかな。ベートーヴェンはじめ交響曲を9曲書いて亡くなった大作曲家が何人もいるからだ。
さて、この曲は各楽章の名前から想像するようなものではなかった。「夜」は夜っぽい幻想と静寂を感じさせるが「火」は激しく燃え上がることなく、熾き火のような静かな火である。「愛」にしても歓びも官能もなく苦悩の日々を振り返るおもむき。楽章間の変化が少ないのだ。作曲家はもはやその真っ只中にはいないのだろう。老爺が若者に愛について、運命について、少々抽象的な語彙で静かに語り伝える、そんな感じのする曲なのである。
弦楽のために書かれた『空色のアダージョ』は美しくおだやかな小品。これは『天上のアダージョ』と訳してもいい。天使や天国、宇宙といったイメージの、『光の天使』以降の一連の作品を思い起こす。
『交響曲 第1番』は2003年に改訂された版の初録音。ラウタヴァーラは1988年、この修業時代の作品に大幅改定を施していた。それを2003年にさらに改訂し、3楽章構成にまとめなおしたのだ。若い頃に書いたという歌曲をベースにした詩的な楽章、といってもかなりリコンストラクションした歌謡的でない緩徐楽章が追加されている。既存楽章にも若干手を加えている。

 

National Orchestra of Belgium
Mikko Franck, conductor

・Recorded in 2005
Ondine Inc.
ODE 1064-5

Book of Visions, etc.

True and False Unicorn

 
1. Symphony No.1 (1955/1988/2003)
2. Adagio Celeste (1997/2000)
  3. Book of Visions (2003/2005)
ラウタヴァーラ

Rautavaara: Garden of Spaces, etc.
Stolzman/ Helsinki Philharmonic Orchestra of Belgium/ Segerstam

ちょっとバーバーの『弦楽のためのアダージョ』みたいに始まる『宇宙の庭』は、ラウタヴァーラがまだ充分アヴァンギャルドだった時代の作品。演奏するたび違ったものになることを目指したといい、指揮者の裁量であるていど曲を作っていくことができる。宇宙空間に数多の星がきらめくようなイメージ。
『クラリネット協奏曲』は被献呈者ストルツマンによる録音。3楽章形式でカデンツァをもつなど古典的構成で書かれている。ほどほどの緊張感が全曲を支配し、クラリネットが寡黙な独り言を続けるアダージョ楽章でさえ静かなるドラマを感じさせる。
もうひとつはラウタヴァーラの代名詞ともいえる『カントゥス・アルクティクス(北極の歌)』。すでにポンマー盤を紹介したが、さすが人気曲、ついにゼーゲルスタム盤の登場となった。これで6種類目かな。

 

Richard Stoltzman, clarinet
Helsinki Philharmonic orchestra
Leif Segerstam, conductor

・Recorded in 2002
Ondine Inc.
ODE 1041-2

Garden of Spaces, etc.

Cantus Arcticus, Piano Concerto
The Virtuoso Clarinet

 
1. Gardens of Spaces (1971/2003)
2. Clarinet Concerto (2001)
  3. Cantus Arcticus (1972)
 
現代音楽 1 / [2] / 3 / 4
early music / baroque / orchestral / concerto / chamber
instrumental / theatrical / vocal works / historical recordings / etc.