クラシックレビュー
古楽   アドマックス「カフェ・マキシマム」  
ジャズのページ ブルースのページ ワールドミュージックのページ 吹奏楽のページ 本を読もう クラシックのページトップへ
中世・ルネサンスの音楽 1 / [2] / 3
baroque / orchestral / concerto / chamber / instrumental
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.
 
heinrich isaac

Motets for Emperor Maximilian I
Ensemble Hofkapelle/ Procter

神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン一世の時代に書かれたモテト集。イザークの名が冠せられているが一種のアンソロジーで、弟子のゼンフル(5)(11)やジョスカンの作品(7)(9)も収められている。イザークは人気曲『インスブルックよさらば』が入っているし、ゼンフルは『深き淵より』が選ばれている。ジョスカンの『犯しがたく清らかに、信仰厚きマリア』は同名のグレゴリオ聖歌(セクエンツ)に続けて演奏される。気の利いた配慮。
解説がていねい。曲の構造、作曲の経緯、皇帝とのかかわりなどが細かに記されていて読み応えがある。ルネサンス宗教曲の常として歌詞はほとんどラテン語だが、対訳(3ヶ国語)が付いている。
演奏はホーフカペレという小編成のアンサンブル。声楽は6人で、コルネット、サックブート、オルガンが加わる。古雅な響きと少人数ならではのインティメイトな雰囲気が魅力だ。

Ensemble Hofkapelle
Michael Procter

・Recorded in 1998
Christophorus
CHR 77217

Motets for Emperor Maximilian I

同じ趣向のアルバム
Music at the Court of Emperor Maximilian I
The Triumphs of Maximilian

 
1. Salve Regina
2. Salve Sancta Parens
3. Virgo Prudentissima
4. Christ ist Erstanden (Instrumental)
5. De Profundis
6. Inviolata, Integra et Casta es Maria
  7. Inviolata, Integra et Casta es Maria
8. Innsbruck, Ich Muss Dich Lassen
9. Proch Dolor
10. Sancti Spiritus Assit Nobis Gratia
11. Quis Dabit Oculis
12. Christus Surrexit (Instrumental)

モナリザのための音楽

Music for Mona Lisa
Concordia

ヴァザーリによれば、レオナルドは『モナリザ』の制作中、モデルの笑顔を絶やさないために楽士たちを雇って音楽を奏させていた。実際にどんな曲が演奏されていたかは判らないのだが、ここにはそのときモナリザが聴いた(かも知れない)音楽が集められている。ジョスカン、コンペール、トロンボンチーノ、イザークなど著名人の作品から作者不詳のものまで22曲。演奏は英国の古楽グループ、コンコルディア。カウンターテノールのロビン・ブレイズが9曲に参加している。
はやい話がルネサンス期の小品集なのだが、レオナルドのアトリエで流れていたかも知れないというのがミソ。コンソート曲はヴィオールやリュートのほかリコーダー、ショーム、バグパイプ、サックブートなどが用いられ、なかなか多彩。弾むような舞曲もあればしっとりしたシャンソンもある。これを聴いているとあなたの口元にもモナリザの微笑みが…。

 

Robin Blaze, countertenor
Concordia (Consort)
Mark Levy, director

・Recorded in 1997
Metronome Recordings
MET CD 1023

Music for Mona Lisa

こんなDVDが…
モナリザの秘密

 
1. Saltarello el francosin
2. Tanto e la donna mia
3. A l'heure que je vous p. x.
4. Rompeltier
5. Helas la fille Guillemin
6. Hor che'l ciel e la terra
7. Amours amours amours
8. Le grant desir
9. Je ne fay plus
10. Dit le burguygnon
11. Latura tu
  12. Pavana el bisson
13. Gagliarda la traditora
14. Se mai per maraveglia
15. Pavana alla venetiana
16. Sartatello
17. Piva
18. Vergine bella
19. Petits vriens
20. Hor oires un chanzon
21. La morra
22. Hor vendut' ho la speranza
crye

Crye
Concordia

アンソニー・ホルボーン、クリストファー・タイ、トマス・ウィールクス、トマス・タリス、トバイアス・ヒューム、ウィリアム・ロウズ…、とくればヴィオールコンソート黄金時代の作曲家たち。英国ルネサンス期のヴィオール作品のオムニバスなのだが、ひとつのテーマに貫かれた、ユニークなアルバムになっている。演奏は前項と同じコンコルディアという英国のアンサンブル。曲によりゲイリー・クーパーのヴァージナル、オルガンが加わる。
下記の曲名を見ていただきたい。涙、嘆き、苦難、叫び、憂鬱、弔鐘などといった言葉がずらりと列んでいる。最後に入っているロウズの組曲もハ短調という調性だ。暗い(Crye)悲しみの音楽。コンコルディアの面々もゆったりしたテンポでていねいに歌い、聴き手をなぐさめてくれるかのようだ。
通常のブックレットのほかに詩画集が付属している。ケーテ・コルヴィッツ(1867-1945)の木版画とグライン・マクスウェル(1962-)の詩をおさめた20頁の小冊子。コルヴィッツは二つの大戦を生き抜き、戦争の悲惨さ、死によって引き裂かれた家族の悲しみを描きつづけた。かの女の悲しみはしかし、力強い主張をともなう。荒々しいまでの表現力。時代は違うが、ルネサンス期の悲しみの音楽を聴きながら見ていても違和感がない。普遍のテーマだからだろう。

 

<Concordia>
Mark Levy, Joanna Levine,
Catherine Finnis, Jonathan Manson,
Emilia Benjamin, viols
with
Gary Cooper, virginals or organ

・Recorded in 1997
Metronome Recordings
MET CD 1020

Concordia: Crye

コンコルディアのアルバム
Music and Art at the Court of Charles I
Royal Fantasies

参考文献:
種子を粉にひくな
Prints and Drawings of K. Kollwitz

 
1. Holborne: Pavana Ploravit
2. Holborne: The Teares Of The Muses
3. Tye: Crye
4. Sumarte: Lachrimae
5. hume: Captain Hume's Lamentations
6. Stonings: Miserere
  7. Tallis: Felix Namque
8. Hume: I Am Melancholy
9. Johnson: A Knell of Johnson
10. Weelks: Lachrimae Pavan
11. Tye: Rachell's Weepinge
12. Lawes: Consort Set in C minor
ダンスタブル

John Dunstable
Orlando Consort

英国音楽史上最初の重要人物ジョン・ダンスタブル(c.1390-1453)。それまで大陸の後塵を拝してきた英国音楽界が一転して影響力絶大な立場を得たのは、ひとえにかれの功績だった。
響きの美しさは当時の英国音楽の特徴。こだわりがあったのか、和声の濁りが嫌いだったのか、当時の作曲家はだいたい似たようなものだった。しかしダンスタブルの作品は美しいだけではなかった。たとえば(6)の『聖霊きたりたまえ』はグレゴリオ聖歌を素材にしながら、複数の旋律を重ねた複雑な構造になっている。といっても横の流れを重視して不協和も辞さない、というのではなく、常に美しい和声が響き、不協和は効果として巧みに処理されていく。きわめて知性的で洗練された音楽なのだ。
かれには美しい旋律に満ちた世俗曲もあるが、このアルバムはモテトゥス、アンティフォン、ミサなどの宗教曲でまとめられている。英グラモフォン誌レコード・オヴ・ジ・イヤー受賞盤で、オルランド・コンソートの素晴らしい歌唱が楽しめる。ラテン語歌詞の英訳付き。

 

<Orlando Consort>
Robert Harre Jones, countertenor
Charles Daniels, tenor
Angus Smith, tenor
Don Greig, bass
with
Simon Berridge & Steven Harrold, tenor

・Recorded in 1995
Metronome Recordings
MET CD 1009

Orlando Consort : John Dunstable

Dunstable: Motets
The Medieval Experience
The Call of the Phoenix
ヨーロッパの響きをたずねて

 
1. Descendi in ortum meum
2. Ave maris stella
3. Gloria in canon
4. Speciosa facta es
5. Sub tuam protectionem
6. Veni sancte spiritus
  7. Albanus roseo rutilat
8. Specials virgo
9. Preco preheminencie
10. O crux gloriosa
11. Salve regina mater mire
12. Missa Rex seculorum
ポール・オデット

Ancient Airs and Dances
Paul O'Dette

レスピーギの管弦楽曲『リュートのための古いアリアと舞曲』はかれのオリジナル曲ではなかった。ローマなどの図書館をめぐって16世紀、17世紀のリュート曲や歌曲を渉猟し、そのうちのいくつかを選んでオーケストレーションを施したものだったのだ。ポール・オデットはそれらの原曲を曲順もそのまま演奏しているから、聴き較べるのも楽しい。曲数が多く見えるのは複数の曲を組み合わせて一つの曲にしたものがあるため。
ご覧のようにモリナーロ、ロンカッリなど作曲者がわかっているものはわずか。大半が作者不詳だ。有名な『シチリアーノ』も作者不詳の『スパニョレッタ』がオリジナル。レスピーギが採り上げて初めて世に知られたのである。日本ではつのだたかしの演奏がTVCMで流れて「クラシックファンでなくても知っているクラシック」の仲間入りを果たした。
図書館に眠っていたものばかり集めたわけで、珍しい曲しかないのは当然かも。要注目は第3組曲の原曲となったブザールのエール・ド・クール(2〜7)。リュート伴奏で歌われ、宮廷のみやびを髣髴させる美しい歌曲だ。第1組曲にあるガリレイという人物は生没年からいってガリレオの父親じゃないかな。かれはすぐれたリュート奏者だったと伝えられている。

 

Paul O'Dette, lute & baroque guitar
Rogers Covey-Crump, tenor
John Holloway, violin
Nigel North, bass lute
Christel Thielmann, bass viol

・Recorded in 1986
Hyperion
CDA 66228

♪ Spagnoletta

廉価盤で
Ancient Airs and Dances

レスピーギは
Ancient Airs and Dances
Orchestral Works

 
'Suite No.1'
1. Molinaro: Ballo detto il Conte Orlando
2. Molinaro: Saltarello del predetto ballo
3. Galilei: Polymnia
4. Anon: Italiana
5. Anon: Villanella 'Orlando fa'che ti raccordi'
6. Anon: Italiana
7. Anon: Passo mezzo bonissimo
8. Anon: Mascherada
'Suite No.2'
1. Caroso: Laura soave
2. Besard: Bransles de village
3. Anon: Campanae Parisienses
  4. Boesset: Divine Amaryllis
5. Gianoncelli: Tasteggiata
6. Gianoncelli: Bergamasca
'Suite No.3'
1. Anon: Italiana/Garsi da Parma: La Cesarina
2. Besard: C'est malheur
3. Besard: Adieu bergere
4. Besard: Beaux yeux
5. Besard: La voila la nacelle d'amour
6. Besard: Quelle divinite
7. Besard: Si c'est pour mon pucellage
8. Anon: Spagnoletta
9. Roncalli: Passacaglia
ルネッサンス

Renaissance Winds
Regal and Popular 16th Century Music for Wind Band

ルネサンス期の管楽アンサンブルのための作品集。曲種はほとんどが舞曲で、4声ないし5声で書かれている。このジャンルではおなじみのクロード・ジェルヴェーズのほか、ジョスカン、イザーク、ゼンフルなど大物たちの手になる曲も収録されている。音楽好きだったヘンリー8世(8)もひとつある。(2)や(14)は1550年アテニャン刊の『ダンスリー』に含まれるもの。ジェルヴェーズは名前が判っている範囲では史上最古のプロのアレンジャーだろう。アテニャンに雇われてさまざまな曲をアンサンブル用に編曲していた。ジャヌカン(16)もアテニャンの刊行になるもので、当時の音楽産業の一面を見るような気がして興味深い。
演奏は「甘い想い出」という名前の6人組。この名前はサンドランのシャンソンの題名“Doulce Memoire”から採られたもの。縦笛、コルネット、ボンバルド、サックブートなど当時の楽器を使い分け、巧みなところを聴かせる。聴きなれない楽器のアンサンブルが遠い昔の宮廷の舞踏を髣髴させてくれる楽しいアルバム。

 

Ensemble Doulce Memoire

・Recorded in 1998
Dorian Recordings
DOR-90261

Renaissance Winds

Doulce Memoire
Chanson et Danceries
Henry VIII and His Six Wives
Danses de la Renaissance
ダンス・マルシェ

古典派時代の管楽作品
Antique Brasses

 
1. Gervaise: Pavanes II & III
2. Gervaise: Gaillarde
3. Josquin: Cueurs desolez
4. Josquin: Plaine de dueil
5. Incerto: T'meiskin was jonck
6. Isaac: La Spagna
7. Anon: Fortuna disperata
8. Henry VIII: Taunder naken
9. Alamire: T'andernaken
10. Senfl: Tandernac II
11. Phalese: Almande d'amour
12. Phalese: Suite de Branles simples
  13. Phalese: Branles gays
14. Gervaise: Pavane d'Angleterre
15. Du Tertre: Gaillarde
16. Janequin: L'Alouette
17. Anon: Pavana El Bisson
18. Anon: Gagliarda La Traditora
19. Anon: La Ternerina
20. Anon: Il Marchese di Saluzzo
21. Anon: L'Inglese
22. Isaac: A la Bataglia
23. Phalese: Pavane de la Bataille
24. Phalese: Gaillarde de la Bataille
アレグリ:ミゼレレ

Allegri: Miserere, etc.
The Tallis Scholars/ Phillips

グレゴリオ・アレグリ(1582-1652)は時代的には初期バロックだがここに入れることにした。このアルバムの主役はパレストリーナ(c.1525-94)の『教皇マルチェルスのミサ』であり、アレグリはルネサンスの巨匠パレストリーナの伝統を引き継いだ作曲家でもあるからだ。
アレグリの『ミゼレレ』(神よわれに憐れみを)はモーツァルト伝説で知られる。有名だからそれは省くとして、システィナ礼拝堂の秘曲とされたこの合唱曲はそれはそれは美しい。構造は二重合唱になっており、第1群が4声、第2群は5声で書かれている。片方が聖歌を歌い、片方が「注釈」と呼ばれる装飾音型を歌っていくという役割分担。難しいようだが、複雑を極めたルネサンス・ポリフォニーからすればえらくシンプル。聴いていてややこしさを感じるところはない。
タリス・スコラーズの録音は定盤と言っていいだろう。ハーモニーが美しくつき抜けるような高音も素晴らしく安定して響く。

パレストリーナはルネサンス最後の大作曲家といわれる。反宗教改革の時代のカトリック音楽を隆盛に導いたとか、複雑化し技巧に走っていた宗教音楽を改革したとか、その功績を伝える文章は多い。この『教皇マルチェルスのミサ』もトリエント公会議で多声音楽が典礼音楽として認められる根拠になったと言われている。
まるでトーンクラスターのように聞こえる(大袈裟か)過剰なポリフォニーに較べこの作品ははるかに簡潔で聞き取りやすく、しかも敬虔な祈りに満ちている。これがいわゆるパレストリーナ様式である。落ち着いた美しさに触れれば音楽史や宗教史に関係なく聴いても深い感動にいざなわれるだろう。

1. Allegri: Miserere
2. Mundy: Vox Patris caelestis
3. Palestrina: Missa Papae Marcelli

 

The Tallis Scholars
Peter Phillips, director

・Recorded in 1980
Gimell Records
CDGIM 339

Allegri: Miserere, etc.

 
中世・ルネサンスの音楽 1 / [2] / 3
baroque / orchestral / concerto / chamber / instrumental
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.