クラシックレビュー
ハープ曲   アドマックス「カフェ・マキシマム」  
ジャズのページ ブルースのページ ワールドミュージックのページ 吹奏楽のページ ブックレビュー クラシックの目次
器楽曲 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / [6] / 7 / 8 / 9 / 10
11
early music / baroque / orchestral / concerto / chamber
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.
 
吉野直子

Naoko Yoshino: Baroque Harp

吉野直子という人はレコード会社と戦い続けているんじゃないだろうか。これはかの女のデビュー録音『アラベスク』(まだ学生だった!)からして言える。ハープ音楽には一般に知られていない作品が数多くあり、かの女はみずからの主要レパートリーでもあるそれらの曲を体系的に録音したかったようだ。多くの人に知ってもらいたいという気持を込めて。しかし誕生したアルバムは無難な小曲集。目新しさにとぼしく、編曲者に吉野のこだわりが見えるていどのものだった。
時代もレーベルもちがうがこのアルバムも戦いのあとが感じられる。中身はバロック期のさまざまな作品を編曲した小品集。輸入盤タイトルは『バロック・ハープ』だが吉野はバロック・ハープを弾いていない。モダン・ハープである。国内盤タイトルは『グレイス〜パッヒェルベルのカノン』という売れ行きを意識したもの。アルバム中もっとも有名な曲をタイトルにしたわけだ。
『カノン』も悪くないが、聴き応えのあるのはマルセル・グランジャニーによるバッハの無伴奏ヴァイオリン作品。ペシェッティの『トッカータ』はサルセドの編曲で、三楽章省略なしで演奏している。パラディシやフランシスクなど珍しい曲も含まれている。クロフトのヴァージナル曲などマニアックとも言えるレパートリー。
吉野は確かなテクニックの持ち主である。ナマを聴くとよくわかるが、力強さと繊細さを併せ持った素晴らしい奏者だ。ここでも難易度の高い曲(編曲)を完璧に弾きこなし、余裕さえ感じさせる。バロック音楽の対位法をハープという楽器で巧みに再現する力量には感心する。

Naoko Yoshino, harp

・Recorded in 1998
Philips 462 599-2

国内盤で
グレイス〜パッヒェルベルのカノン

デビュー録音は
アラベスク

タイトルはひどいが中身はいい
The Healing Harp
ほかには
ハープ・リサイタル

 
1. Paradisi: Toccata
2. Croft: Sarabande
3. Croft: Ground
4. Bach/Grandjany: Prelude from Partita No.3
5. Francisque: Le Tresor d'Orphee
6. Handel: Passacaille
  7. Loeillet: Toccata
8. Bach/Grandjany: Fugue from Sonata No.1
9. Pescetti: Toccata in C minor
10. Pachelbel: Canon
11. Bach: Andante from Italian Concerto
12. Corelli: Gique
マリア・グラーフ

Maria Graf Recital
(Debussy/ Faure/ Caplet/ Tournier/ Roussel/ Tailleferre/ Ravel)

マリア・グラーフ初のリサイタル・アルバムだったもの。待望のソロだったことと近代フランスの作品のみでまとめられた選曲のよさで、発売当初はなかなか好評だった。なぜかハープ独奏曲を書かなかったドビュッシーとラヴェルは編曲もの。ほかはこれがオリジナルで、なかでもトゥルニエは自身が優れたハープ奏者だった。有名作曲家が多くてハープ専門の人がトゥルニエだけなのはメジャーらしい「配慮」と言っておこう。
それはさておき、近代フランスは(じつは)ハープ黄金時代であり、このアルバムはその一端を知るには好適な一枚なのである。
マリア・グラーフの端正な演奏はとても聴きやすい。上品なアプローチで繊細さも充分だ。ただ好みを言えばある種のいい加減さがほしい。ひらめきというか自由さというかフランスっぽさというか…。

 

Maria Graf, harp

・Recorded in 1990
Philips 432 103-2

国内盤で
フランス・ハープ・リサイタル
亡き王女のためのパヴァーヌ

ハープ・オリジナルを聴く
ZERO

 
1. Caplet: 2 Divertissements
2. Faure: Une Chatelaine en sa tour..., Op.110
3. Faure: Impromptu, Op.86
4. Roussel: Impromptu, Op.21
  5. Tailleferre: Sonata for Harp
6. Debussy: 2 Arabesque
7. Ravel: Pavane pour une infante defunte
8. Tournier: Au Matin - Etude de concert
モレッティ

Isabelle Moretti Harp Recital
(C. P. E. Bach/ Dussek/ Hindemith/ Casella/ Tailleferre)

イザベル・モレッティのリサイタル・アルバム。小品なし。すべてハープのために書かれたソナタでまとめられている。バロックの残滓を感じるエマヌエル・バッハ、古典派のデュセック(ドゥシーク)、そして20世紀のヒンデミット、カセッラ、タイユフェール。いずれもハープ奏者にとって大切なレパートリーであり、演奏する側も聴く側も手応え充分の作品ばかり。
エマヌエルの作品は愉悦感に満ちた楽しい演奏で、モレッティのリズム感の素晴らしさに驚かされる。こんなに弾むハープはなかなか聴けない。
デュセックの作品はピアノ版もある。ドラマチックな起伏のある技巧的な曲をモレッティはあざやかに弾ききってしまう。曲と一体化したかのような自然な感情の発露が素晴らしい。デュセックはロマン派に踏み込んでいたのだろうか。
残る3曲は時代がだいぶ違うので、さほどロマンチックにはならないし人なつっこくもない。が、かっこいい。ハープの可能性を追求した感のあるヒンデミット。色々やってくれるがドライな抒情が20世紀である。最終楽章の「歌」が美しい。
カセッラとタイユフェールは古典的なたたずまいの曲なので初めて聴く人にも抵抗が少ないだろう。モレッティはリズムを巧みに伸縮させて聴き手を音楽の波に巻き込んでいく。とくにタイユフェール作品のもつ華やかさの表出は見事。この柔軟さをマリア・グラーフにも分けてあげたい。

 

Isabelle Moretti, harp

・Recorded in 1986
harmonia mundi france
HMT 7905 184

Isabelle Moretti Harp Recital

モレッティのフランス作品集は
French Harp Music

 
1. C. P. E. Bach: Sonata in G major (1762)
2. Dussek: Harp Sonata in C minor, Op.2, No.3
3. Hindemith: Harp Sonata (1939)
  4. Casella: Harp Sonata, Op.68 (1941)
5. Tailleferre: Harp Sonata (1957)
ニカノール・サバレタ

Nicanor Zabaleta: New Age Harp - Old Age Music
(Spohr/ Parish-Alvers/ Glinka/ Naderman, etc.)

20世紀の代表的ハープ奏者ニカノール・サバレタの小品集。何故この音源がこのレーベルから出ているのか判らない。わたしはこれをCDショップのワールド・ミュージックのコーナーで偶然見つけた。録音年月の記載がないが古い録音であることは間違いなく、少々硬めの音質だ。ただ音の粒立ちがはっきりしているので、かなり聴きやすい。
サバレタの簡略なバイオが載っているだけで作曲家や楽曲の解説は一切なし。参考までに作曲家の名前と生没年を記すと

(1) Ludwig Spohr (1784-1859)
(2) Elias Parish-Alvers (1808-1849)
(3) Francois Joseph Dizi (1780-1840?)
(4) Michael Glinka (1804-1857)
(5) Lucas Ruiz de Ribayas (17th century)
(6) Anonymous
(7) Diego Fernandez de Huete (18th century)
(8) Manuel Rodriguez Coelho (1563-1623)
(9) Francois-Joseph Naderman (1773-1835)
(10) Theodore Labarre (1805-1870)

ルネサンスから古典派、初期ロマン派にいたるさまざまな作品が収められている。グリンカ、シュポーアなどはよく演奏されるし、ナデルマンもハープ好きならなじみの作曲家だろう。コエルホ、リバヤス、ラバールあたりはかなりマニアック。全体に美しい曲が多く、サバレタの安定感のあるクリアな演奏が各曲の魅力をうまく引き出している。出所のわからない録音ではあるけれど、推薦に値する。

 

Nicanor Zabaleta, harp

・Recording date unknown
Legacy International
CD 404

New Age Harp - Old Age Music

サバレタを聴く
16、17世紀スペインのハープ
フランスとスペインのハープ

Music for Harp

 
1. Spohr: Fantasy, Op.35
2. Parish-Alvers: Three Romances
3. Dizi: Sonata No.2
4. Glinka: Nocturne
5. Ribayas: Hachas and Pavane
  6. Anonymous: Seguidillas
7. de Huete: Italian Song with Variations
8. Coelho: Tiento para arpa
9. Naderman: Sonatina
10. Labarre: Caprice
マリー・アントワネットのハープ Viotti: Music for Harp
(Viotti/ Paisiello/ Clementi/ Pollini/ Cherubini)

18世紀終わり頃から19世紀前半にかけて活躍したイタリア系作曲家の作品を集めたオムニバス。聴く機会の少ない曲がほとんどで、よくあるハープオムニバスとは様子が違う。ちょっと地味だが存在価値の高いアルバムだ。
ヴィオッティの『ソナタ』はマリー・アントワネットに献呈されたと言われるもの。かの女が実際に演奏したかどうかは分かっていない。典型的な古典派のソナタで、構成はこの時代の一般的なピアノソナタとかわらない。第一楽章は二つの主題をもとにした巧みな展開が聴かれる。華麗で優雅な響きのなかからのびのびした楽想とたしかな構成力が感じられ、満足感を味わえる。美しいアダージョ楽章につづく第三楽章は輝かしいアレグロ。技巧的な旋律線が面白い。これだけの曲を献呈されるのだから、マリーの腕前は相当なものだったのだろう。次のイ長調のロンドはもとはピアノ曲で、プレイエルがハープ用にアレンジしたものだという。プレイエルの工房ではハープも作っていた。
パイジェッロとケルビーニの曲はオペラからとられたもの。『序曲』となっているがパイジェッロのほうはポプリみたいな作りで、オペラ中の色々な旋律をつなぎ合わせている。原曲を知らないのでよく分からないが、当時の人はこれを聴いてオペラの各場面を思い起こすことができたのだろう。
クレメンティとポリーニの作品は変奏曲。どちらもよく書き込まれた佳品だ。クレメンティにハープ作品があるとは知らなかったが、友人だったデュセックはピアノソナタのほかにハープソナタも多数のこしており、影響を受けたのかも知れない。
 

Antonella Ciccozzi, harp

・Recorded in 1999
Tactus TC 752201

Viotti: Music for Harp

同種のアルバム
Italian Harp Music

 
1. Viotti: Sonata in B-flat major
2. Viotti: Rondo in A major
3. Paisiello: Overture "Theodore"
  4. Clementi: Andante con variazioni
5. Pollini: Capriccio e aria con variazioni
6. Cherubini: Overture "Lodoiska"
デュセック

J. L. Dussek: Harp Sonatas
Kyung- Hee Kim

ドゥシーク(=デュセック1760-1812)はクレメンティと名声を分かちあうほどのピアニスト、ピアノ教師だった。最近次々とリリースされたピアノソナタ、ピアノ協奏曲を聴くと、かれがベートーヴェンの先輩だったことが実感できる。
しかしハープ作品となると録音が少ない。このアルバムのようにドゥシークだけで一枚のハープ作品集というのは珍しいのである。かれのハープソナタは基本的にピアノソナタと同じで、どちらでも演奏できる作品もある。同じ曲が別の作品番号でハープ用、ピアノ用として出版されていたり、混乱してしまう。
このアルバムの『6つのソナティナ』もそう。2楽章からなる3分程度のかわいらしい小品たちで、ハープ奏者クルムフォルツの妻に献呈されている。
5曲あるソナタは本格的な古典派のソナタであり、聴き応え充分。民謡旋律が用いられた『ソナタ ヘ長調』(10)が親しみやすいが、堂々とした構成の『第1ソナタ 変ホ長調』が聴きものだ。
演奏は1964年生まれの韓国のハーピスト、キム。主に室内楽分野で活動しており、ソロはこれ以外見あたらない。

 

Kyung-Hee Kim, harp

・Recorded in 1997
Mandala MAN 4909

Dussek: Harp Sonatas

ドゥシーク(デュセック)のハープ
Harp Concertos
The Virtuoso Harp
Dussek & the Harp

 
1. Sonata in G major
2. Sonata in B-flat major
3. Grande Sonate in B-flat major
4. Sonatine No.1
5. Sonatine No.2
6. Sonatine No.3
  7. Sonatine No.4
8. Sonatine No.5
9. Sonatine No.6
10. Sonata in F major
11. Premiere Sonate in E-flat major, Op.34
ナデルマン

F. J. Naderman: Sept Sonates pour Harpe
Annie Challan

ナデルマン(1773-1835)はクルムフォルツに学んだハープ奏者。ハープ製作者でもあり、教師でもあり、作曲家でもあった。ハープ協奏曲、ハープを含む室内楽、ハープ独奏曲を遺したが、一般に知られている曲はない。
このアルバムの7曲は『7つの上達するソナタ』と呼ばれるもの。作曲者みずから名づけた“progressive”をどう訳すかの問題で、「進歩的なソナタ」でもかまわない。教育的な目的で書かれたからこれを練習すれば上達するし、形式的自由さやフィンガリングの工夫などに進歩的なものがあるからだ。
作曲年がわからないのだが、すでにロマン派の息吹が感じられる作品だ。旋律の美しさ、和声の流れの自由さが魅力的な曲ばかり。上記ドゥシークと較べるとわかるように、ピアノで演奏してもいいという段階から脱しつつある。いかにもハープ曲という書法が確立されているのだ。

それはそうと、アニー・シャランが使用しているのはナデルマン工房のライヴァルだったエラール製のハープ。なんで?

 

Annie Challan, harp

・Recorded in 1979
Arion ARN 55394

Sept Sonates pour Harpe

Music for Flute and Harpe
アニー・シャランを聴く
序奏とアレグロ

 
1. Sonata No.1 in E-flat major
2. Sonata No.2 in C minor
3. Sonata No.3 in B-flat major
4. Sonata No.4 in G minor
  5. Sonata No.5 in F major
6. Sonata No.6 in D minor
7. Sonata No.7 in C major
ユーアン・ジョーンズ

Ieuan Jones: Rhapsodie
(Grandjany/ Tailleferre/ Damase/ Salzedo, etc.)

13歳でウェールズのナショナル・ユース・オーケストラの最年少メンバーになったというハープ奏者ユーアン・ジョーンズ。マリーサ・ロブレスに学んでいるそうだ。これまでにソロ、協奏曲、室内楽など数枚のアルバムを発表。ただ、自らの名前を冠したアルバムは2〜3枚しかないはず。
曲目をご覧になれば判るように、よくあるハープ名曲集。グランジャニー、サルセド(サルツェード)というハープ奏者たちの作品、ピエルネ、タイユフェール、フォーレ、ルーセル、ハチャトゥリアンらの小品や編曲ものがずらりと並んでいる。このアルバムでなければ聴けない曲ってのはないのだが、演奏がよいのでしょっちゅう取り出して聴いている。
ジョーンズの演奏は男性奏者だからといってとくに男っぽいとか力強いということはない。初々しいというか、素直でクセのない、とてもさわやかな演奏だ。音の一粒一粒がきれいに揃ってくっきり聴きとれるし、繊細さも十分そなえている。だから起伏に富む曲の聴き応えが増す。グランジャニー(1)、ダマーズ(12)やサルセド(13)はその効果がよくあらわれている。ほかの作品もそれぞれの特徴がよくわかり、魅力を再発見させてくれる。

 

Ieuan Jones, harp

・Recorded in 1989
ASV CD WHL 2111

Rhapsodie

ほかには
Parish-Alvers
Music for Welsh Harp & Tenor

 
1. Grandjany: Rhapsodie
2. Tailleferre: Harp Sonata (1957)
3. Faure: Une Chatelaine en sa Tour
4. Faure: Apres un Reve
5. Roussel: Impromptu
6. Pierne: Impromptu Caprice
  7. Debussy: Clair de Lune
8. Khachaturian: Oriental Dance
9. Khachaturian: Toccata
10. Damase: Sicilienne Variee
11. Salzedo: Variations sur un Theme dans
  Le Style Ancien
 
器楽曲 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / [6] / 7 / 8 / 9 / 10
11
early music / baroque / orchestral / concerto / chamber
theatrical / vocal works / contemporary / historical recordings / etc.