ジャズCDレビュー
マイルズ・デイヴィス   アドマックス「カフェ・マキシマム」  
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miles davis Miles Davis: 'Round About Midnight

商売ってのは油断も隙もあったもんじゃない。このアルバムはマイルズのコロンビア初録音となったものだが、録音日時は1955年10月と56年6月、9月。つまりあのプレスティッジのマラソン・セッションが終了していない時期に、こっそり録音されていたわけだ。コロンビアはマイルズのプレスティッジとの契約が切れるのを待ってすぐ『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』のタイトルで発売した。
タイトル曲はもちろんセロニアス・モンクの作品。“'Round Midnight”と“'Round About Midnight”の二種類のタイトルがあるのは、のちに歌詞をつける際に語呂がいいように変えてしまったから。別の曲ではない。
この曲を有名にしたのが、ほかでもないマイルズ。コンサートで大評判をとったというエピソードをご存知の方も多いだろう。レコードではもちろんこのアルバム。ぴんと張りつめた叙情的ミュートが、他の追随を許さないマイルズ独特の世界を描き出す。クールで甘さがないからかっこいいのである。
オリジナル・クインテット最盛期の録音だけにほかの曲も水準以上の仕上がり。この時期得意にしていたスタンダードはさすがに完成度が高い。ポップな素材から聴き応えあるジャズを産み出す能力、センスは、マイルズやロリンズなど、限られたミュージシャンにしかなかったように思える。

Miles Davis, trumpet
John Coltrane, tenor sax
Red Garland, piano
Paul Chambers, bass
Philly Joe Jones, drums

・Recorded in 1955 & 56

'Round About Midnight
ラウンド・アバウト・ミッドナイト

SACDも出ている
'Round About Midnight [SACD]
ラウンド・アバウト・ミッドナイト [SACD]

 
1. 'Round Midnight
2. Ah-Leu-Cha
3. All of You
4. Bye Bye Blackbird
5. Tadd's Delight
  6. Dear Old Stockholm
7. Two Bass Hit [Bonus track]
8. Little Melonae [Bonus track]
9. Budo [Bonus track]
10. Sweet Sue, Just You [Bonus track]
マイルス・アヘッド Miles Davis +19: Miles Ahead

マイルズ・デイヴィスが親友ギル・エヴァンスとの共同作業を始めたのはコロンビア移籍の直後からだった。『マイルズ・アヘッド』はその最初の成果で、1957年に行われた5つのセッションで構成されている。『クールの誕生』以来のコラボ。雰囲気的にはあのノネットを引きずったところがあるが、今回は編成が大きく、約2倍の人数。ソロもマイルズだけしかとっていない。
マイルズはフリューゲルホルンのソフトな音色を活かした控えめなソロを聴かせる。リリシズムに焦点を当てたアルバムと言えるかも知れない。楽器の特性上鋭い表現はできないわけで、印象は地味だけどつまらないわけではない。比較的狭い音域で音数も少なく、マイルズは抒情的な歌を紡いでいく。
スローな曲ではコープランドの『クワイエット・シティ』を連想する。静謐さが大都会の憂愁を思わせるのだ。レオ・ドリーブの『カディスの娘たち』(2)も興味を惹く。フランスの作曲家が書いたスペイン風の歌曲。そしてギルの『パブロのためのブルーズ』もまたスペインの音階(モード)で書かれている。このアルバムはモードジャズ序曲でもあったのだ。
リマスタリングによってギルの繊細微妙なオーケストレーションがくっきり聴きとれるようになった。(11)以降はボーナストラック。

 

Miles Davis, flugelhorn
Ernie Royal, trumpet
Bernie Glow, trumpet
Jimmy Cleveland, trombone
Bill Barber, tuba
Lee Konitz, alto sax
Danny Bank, bass clarinet
Paul Chambers, bass
Arthur Taylor, drums
and others

・Recorded in 1957

Miles Ahead
マイルズ・アヘッド

 
1. Springsville
2. The Maids of Cadiz
3. The Duke
4. My Ship
5. Miles Ahead
6. Blues for Pablo
7. New Rhumba
  8. The Meaning of the Blues
9. Lament
10. I Don't Wanna Be Kissed
11. Springsville [Alt. take]
12. Blues for Pablo [Alt. take]
13. Meaning of the Blues/Lament [Reheasal]
14. I Don't Wanna Be Kissed
マイルストーンズ Miles Davis: Milestones

マイルズがモードによるジャズを初めて世に問うたアルバム。文字どおりマイルストーンとなった一枚だ。…なんていうとものものしいが、リクツが解らないと楽しめないわけではない。人気があるのはリクツ抜きでかっこいいからである。
音楽やってるorやったことのある人はタイトル曲“Milestones”が二つのモード(旋法=音階)で書かれているのがわかるかと思う(しかも各音階の3つの音しか使っていないシンプルなテーマ!)。音階をもとにした今までより自由なアドリブ。それがマイルズが開拓したモードジャズの特徴。和声進行にもとづくジャズはどうしても1コーラス単位でアドリブが完結してしまう。音階さえ守ればいいモードジャズは、数コーラスにわたるアドリブをぶつ切りにしないですむのだ。理論はともあれ、(2)と(4)がほかの曲と雰囲気がちがうなってのは、だれでも気がつくと思う。
一部先生(及びジャズファン)はキャノンボールとコルトレーンのソロを「手さぐり状態」だの「おっかなびっくり」だのと評する。たしかに“Kind of Blue”やそれ以後の演奏と比較したら自由さ、スケール感がいまいちかも知れない。レッド・ガーランドがトリオで奏する“Billy boy”が古くさいという意見もある。これは典型的なコードによるジャズだから。
コードとモードの混在。過渡期のアルバムなんである。しかし一つひとつの演奏は素晴らしいできばえだ。モンクの“Straight, No Chaser”なんてずいぶんかっこいいと思うが、如何?

○リマスター盤は3トラック追加されている。

 

Miles Davis, trumpet
Julian Cannonball Adderley, alto sax
John Coltrane, tenor sax
Red Garland, piano
Paul Chambers, bass
Philly Joe Jones, drums

・Recorded in 1958

Milestones (Rmst)
マイルストーンズ+3

 
1. Dr. Jekyll
2. Sid's Ahead
3. Two Bass Hit
4. Milestones
5. Billy Boy
  6. Straight, No Chaser
7. Two Bass Hit [Alt. take]
8. Milestones [Alt. take]
9. Straight, No Chaser [Alt. take]
ニューポート

Miles Davis at Newport 1958

マイルズの数ある作品中「はずしてもかまわない」アルバムの一つかも。とはいえ非常に興味深いアルバムでもある。まず1950年代のライヴがめずらしい(60年代はやけに多い)こと、キャノンボールとコルトレーンを従えたセクステットである(この編成の正規録音は少ない)こと、ピアノがビル・エヴァンスである(ブレイク以前のスタイルが聴ける)こと、ジミー・コブがやけに張り切っている(マイルズはかれのおとなしい演奏に不満をもらしていた)ことなどなど。
まだ『カインド・オヴ・ブルー』以前のジャズであり、メンバーは同じだがオーソドックスに感じられるかも知れない。曲目もバップチューン中心だしね。しかし演奏は熱い。コルトレーンは音を敷きつめるシーツ・オヴ・サウンドをすでに身につけている。音を切りつめるマイルズとは逆方向に向かおうとしているわけだ。キャノンボールは変身の兆しが見えないが、ブルーノート盤『サムシン・エルス』の4カ月後、貫禄さえ漂わす充実ぶりだ。張り切りすぎのコブがうるさいことをのぞけば満足度の高いライヴといえる。

 

Miles Davis, trumpet
Julian Cannonball Adderley, alto sax
John Coltrane, tenor sax
Bill Evans, piano
Paul Chambers, bass
Jimmy Cobb, drums

・Recorded in 1958 (Live)

Miles Davis at Newport 1958
アット・ニューポート 1958

 
1. Ah-Leu-Cha
2. Straight, No Chaser
3. Fran-Dance
  4. Two Bass Hit
6. Bye Bye Blackbird
7. The Theme
ポーギーとベス

Miles Davis: Porgy and Bess

マイルズとギル・エヴァンスとのコラボレーション第二作。ガーシュウィンのオペラ『ポーギーとベス』をジャズ版交響組曲としたものだ。右記のような豪華メンバーのオケをバックに、マイルズのトランペットとフリューゲルホルンが全面にフィーチャーされている。
ギルの独創的なオーケストレーションが聴きものだ。原曲からは想像できない新鮮な和声に彩られ、楽器のブレンドの妙もあって全く新しい『ポーギーとベス』を産み出している。
マイルズはトランペットとフリューゲルホルンを使い分けている。フリューゲルホルンはトランペットを少しでぶっちょにしたような楽器で、トランペットが鼻をつまんだみたいな音色をもつ。このソフトさが見事な効果をあげ、マイルズの美しいソロを際立たせている。
マイルズが録音にあたってギルから手渡されたパート譜にはコードが書かれていなかった。書かれていたのは音階だけ。つまりモードである。ギルは原曲をモードに読み替えて、マイルズの自由なアドリブを引き出したのだ。

 

Miles Davis, trumpet or flugelhorn
with orchestra incl.
John Coles, Ernie Royal, trumpets
Jimmy Cleveland, Frank Rehak, trombones
Cannonball Adderley, Danny Banks, saxes
Julius Watkins, Gunther Schuller, horns
Romeo Penque, Phil Bodner, flutes
Bill Barber, tuba
Paul Chambers, bass
Philly Joe Jones, drums
and others
Gil Evans, arrangements

・Recorded in 1958

Porgy and Bess
ポーギー&ベス+2

 
1. The Buzzard Song
2. Bess, You Is My Woman Now
3. Gone
4. Gone, Gone, Gone
5. Summertime
6. Oh Bess, Oh Where's My Bess?
7. Prayer (Oh Doctor Jesus)
8. Fisherman, Strawberry and Devil Crab
  9. My Man's Gone Now
10. It Ain't Necessarily So
11. Here Come de Honey Man
12. I Loves You, Porgy
13. There's a Boat That's Leaving Soon for New York
14. I Loves You, Porgy [Alt. take]
15. Gone [Alt. take]
カインド・オブ・ブルー

Miles Davis: Kind of Blue

ジャズ・レコード史上もっとも売れたアルバムであり、現在も好調に売れ続けている奇跡の一枚。マイルズの最重要作に位置づけられ、以後のジャズ界に与えた影響の大きさという点でも傑出したアルバム。1960年代のメインストリームはモード一色に染まっていくのである。
マイルズのモード初録音は“Milestones”ということになるが、マイルズはこの時期ギル・エヴァンスとのコラボレーションを通じてモードの探求に励んでおり、上記“Porgy and Bess”でもモードによる自由度の高いアドリブを聴かせていた。“Kind of Blue”は再び自己のセクステットに戻ってその成果を示したもの。アドリブにおける「旋律の自由」が、ソロが長いゆえによくわかるのでは?
もう一人のエヴァンス、ビル・エヴァンスの参加がアルバムの魅力を高めている。西欧近現代音楽にシンパシーのあるかれは、マイルズの書いたこれらオリジナル曲の目指すところをよく理解し、斬新で精妙な和声を提供して、一種ミステリアスともいえる独特のバックグラウンドを形づくっている。“Flamenco Sketches”のソロを聴けば、モード手法が和声の面でも新たな可能性を切り拓くものだったとわかる。当録音はエヴァンスにとっても出発点だった。

○初出CDをお持ちの方はリマスター盤に買い換えることをお奨めする。音質が全くちがう。別物である。それより重要なのはピッチのミス。ピッチの狂った状態の曲が3曲もあったのだ。古い方は処分してしまいましょう。

 

Miles Davis, trumpet
Julian Cannonball Adderley, alto sax
John Coltrane, tenor sax
Wynton Kelly, piano (2)
Bill Evans, piano (all others)
Paul Chambers, bass
Jimmy Cobb, drums

・Recorded in 1959

Miles Davis: Kind of Blue
カインド・オブ・ブルー+1

 
1. So What
2. Freddie Freeloader
3. Blue in Green
  4. All Blues
5. Flamenco Sketches
6. Flamenco Sketches [Alt. take]
スケッチ・オブ・スペイン

Miles Davis: Sketches of Spain

マイルズ・デイヴィスとギル・エヴァンスがコロンビアに遺したコラボレーションのうち、最高傑作とされるのがこの“Sketches of Spain”だ。この二人は1957年の“Miles Ahead”でドリーブを採り上げていたが、ここではロドリーゴ(1)とファリャ(2)(バレエ音楽『恋は魔術師』から)が素材に選ばれている。また上記“Kind of Blue”で“Flamenco Sketches”を演っていたように、この時期のマイルズはスペイン色を強めていた。単なる異国趣味ではなく、モードのために…。
わたしたちがスペイン情緒を感じるのは、スペイン音楽の多くが独自のモード(ミの音階)で書かれているから。マイルズとギルはこの音階で作られた民族色の濃いクラシック作品を素材に選んだ。
ギルのオーケストレーションは例によって個性的だけれど、原曲をご存知の方は意外に忠実な編曲だと気づくだろう。ことに『アランフェス協奏曲』(第二楽章)は起伏のある原曲の構成をほぼそのままなぞっていく。有名なもの憂い主題だけでなく、中間部の情熱的な高揚もきちんと再現されている。

マイルズの自叙伝によると、ロドリーゴはこの演奏がお気に召さなかったらしい。「でもかれのところには印税がたっぷり入ったのさ」とマイルズが言うように、作曲者の不満とは関係なくよく売れた傑作アルバムである。

 

Miles Davis, trumpet
with Gil Evans Orchestra

・Recorded in 1959 & 60

Miles Davis: Sketches of Spain
スケッチ・オブ・スペイン+3

 
1. Concierto de Aranjuez
2. Will o' the Wisp
3. The Pan Piper
4. Saeta
  5. Solea
6. Song of Our Country
7. Concierto de Aranjuez, Pt.1 [Alt. take]
8. Concierto de Aranjuez, Pt.2 [Alt. take]
 
ジャズ・トランペット Page 1 / 2 / 3 / 4 / [5] / 6
TROMBONE / WOODWINDS / PIANO / GUITAR / ORGAN
VIBES / DRUMS / MISCELLANEOUS / BIG BAND /COMBO / VOCAL